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2012 年度 実施状況報告書

安定マッチング問題の合理的なモデル化とアルゴリズム開発

研究課題

研究課題/領域番号 24500013
研究種目

基盤研究(C)

研究機関京都大学

研究代表者

宮崎 修一  京都大学, 学術情報メディアセンター, 准教授 (00303884)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワード安定マッチング / Gale-Shapleyアルゴリズム / 近似アルゴリズム / 近似度 / NP困難 / APX困難
研究概要

安定マッチング問題では、例えば学生と研究室という2つの集合があり、学生は研究室を、また研究室は学生を好みの順に順序付けした希望リストを提出する。これらのリストに基づいて「安定性」という条件を満たすマッチング(配属)を求めるのが安定マッチング問題である。本問題は上述の研究室配属の他、研修医の病院配属や小学生の中学校への割り当てなど様々な応用がある。これらの各応用では安定マッチング問題がそのままの形で使われるわけではなく、使われる状況に応じて異なるモデル化がなされている。本研究は、そのようなさまざまなモデル化のもとで、効率の良いアルゴリズムの開発やアルゴリズムの限界の解明などを行う。本年度は、以下の結果を得た。
1. 学生をプロジェクトへ配属する問題(SPA-P)が、ManloveとO'Malleyにより2008年に提案されていた。彼らは,最大安定配属を求めることがAPX困難であることを示し,さらに多項式時間2-近似アルゴリズムを与えた.本研究では,近似度の上限を1.5に,また,下限を21/19 (>1.1052)に改良した.なお本結果の国際会議発表は昨年度であるが,本年度はこの結果を論文誌に投稿し採択された.
2. Gale-Shapleyアルゴリズムは、男性最適安定マッチングという男性に最も有利で女性に最も不利な安定マッチングを出力することが知られている.しかし,男性最適安定マッチングであっても,男性に極端に不利な場合が存在することも知られている.本研究では,そのような場合でも,男性1人の希望リストを操作することにより男性を救済する問題を提案し、最適化問題および判定問題に対して効率の良いアルゴリズムを構築した。また、リストを変更できる人数をk人に拡張した場合に対する困難性の証明とアルゴリズムの開発も行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初計画において、平成24年度は(1)最大サイズ安定マッチング問題に対する近似アルゴリズム、および(2)定員下限付き安定マッチング問題に対する近似アルゴリズムの2つを主テーマと考えていた。これらについての研究は進めてみたものの、論文として発表できるだけの成果は得られなかった。
一方で、平成26年度以降に取りかかろうと考えていたテーマに対して良いアイデアが浮かび、一定の成果を得ることが出来た(「研究実績の概要」の2番)。このように、内容として必ずしも計画通りに進んではいないものの、量的には当初目標としていたものと同程度のものが得られており、おおむね順調に進展していると考えることが出来る。

今後の研究の推進方策

平成24年度に当初予定として進めてきた(1)最大サイズ安定マッチング問題に対する近似アルゴリズム、(2)定員下限付き安定マッチング問題に対する近似アルゴリズムを今後も進めていく。
(1)については、一般的な入力に対する現在最適なアルゴリズム(1.5-近似アルゴリズム)を改良するのは困難であるので、NP困難かつ実用的な範囲でより制限された入力集合をターゲットとする。具体的には、(a)女性側のみが同順位を持ち、(b)リストに同順位を持っている女性のリストはその同順位のみからなる、という制限である。我々は、2008年に提案されたKiraly氏の手法に対して、線形計画を組み合わせる手法を提案し、それが(a)のみの制限に対して近似度1.5を切る1.47を達成することを示している。この手法を(b)の制限まで加えた入力に対して解析することが第1歩であると考えている。
(2)については、現在得られている√n近似アルゴリズムを改良することが最大の目標であるが、これまでの研究により定数近似が不可能であるという強い予想が得られている。したがって、ある程度効率の良いアルゴリズムが存在するモデルを考案することも必要だと考えている。特にこのテーマは日本の研修医配属における地方病院への研修医不足を主な動機として始めているが、現実には医学部学生への奨学金給付などの対策が講じられているため、定員下限付きモデルに拘らず、奨学金制度を考慮した研修医配属という新たなモデルを取り扱っていくことも考えられる。
上記以外にも、オンライン安定マッチングや対戦略性の問題など、申請時に提案した他のテーマにも取り組んでいく。

次年度の研究費の使用計画

当初の予定通り、以下の方針で使用する。まず、研究費の大半は出張旅費に使用する。主な目的は、アルゴリズム関係の研究会や国際会議に出席し、情報収集や研究発表を行うことである。海外出張2回程度、国内出張10回程度を予定している。特に平成25年はハンガリーにて安定マッチングのサマースクールが開催されるので、都合がつけば出席したい。物品費は主に図書の購入に充てる。本テーマは市場調査が必要となるので、計算機科学関連の専門書籍のみならず、一般書籍や経済学関係図書(メカニズムデザインなど)も購入する。人件費は学生のアルバイト代(謝金)に充てる。今年度は文献調査及びマッチング市場の調査を依頼するつもりである。それ以外に、会議への参加費や論文誌への投稿に使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Improved Approximation Bounds for the Student-Project Allocation Problem with Preferences over Projects2012

    • 著者名/発表者名
      Iwama, K., Miyazaki, S. and Yanagisawa, H.
    • 雑誌名

      Journal of Discrete Algorithms

      巻: Vol. 13 ページ: pp. 59-66

    • DOI

      10.1016/j.jda.2012.02.001

    • 査読あり
  • [学会発表] 希望リスト変更による男性最良安定マッチングの改善2013

    • 著者名/発表者名
      井下貴雄, Robert W. Irving, 宮崎修一, 岩間一雄, 永瀬高志,
    • 学会等名
      電子情報通信学会2013年総合大会
    • 発表場所
      岐阜大学
    • 年月日
      20130319-20130319
  • [備考]

    • URL

      http://www.lab2.kuis.kyoto-u.ac.jp/~shuichi/paper.html

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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