研究課題/領域番号 |
24500015
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研究機関 | 独立行政法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
吉田 真紀 独立行政法人情報通信研究機構, ネットワークセキュリティ研究所セキュリティアーキテクチャ研究室, 主任研究員 (50335387)
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キーワード | 暗号 / 困難性仮定 / 正当性検証 / Bilinear Group / Generic Model |
研究概要 |
情報セキュリティの基幹技術である暗号の安全性は,ある種の数学問題の求解が困難であること(困難性仮定)に支えられている.本研究の目的は,Bilinear Group(BG)と呼ばれる数学的構造に基づく新世代の暗号に対して,その安全性を支える困難性仮定の正当性を保証する技術の開発である.現状,困難性仮定の正当性を保証する唯一の方法は,Generic Model(GM)と呼ばれる計算モデルにおいて問題の困難性を証明することである.そのために,以下の4つを達成することを目標としている.(1) 困難性仮定の定式化,(2) GMにおける困難性証明の自動生成法,(3) 提案法の実装と適用実験による有用性確認,(4) 暗号設計者向けツールの開発.平成25年度は,昨年度の (1) の定式化の下で,対象とする困難性仮定を一般的なクラスに拡張し,(2), (3) を実施した.具体的には以下の通りである. (1) 対象とするクラスは,k-BDHP など,パラメータをもつ困難性仮定を新たに含み,従来研究において,正当性証明の具体例や攻撃有無判定・導出が存在しない. (2) 対象とするクラスの任意の困難性仮定に対して初めて,正当性証明法と攻撃有無判定・導出法を定式化した.なお,困難性仮定がパラメータをもつ場合,定式化はパラメータに依存した形となる. (3) 提案法の実装と適用実験による有用性を確認するため,対象とするクラスの代表例となる困難性仮定に対して攻撃有無判定・導出法を数式処理システム Maple を用いて実装し,適用した.その際,パラメータは近年のセキュリティパラメータに基づき定めた.結果として,いずれの困難性仮定も攻撃が存在しないことを確認でき,GM において正当性が証明できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度に予定していた (2), (3) のうち,(2) は対象とするクラスの任意の困難性仮定の正当性証明と攻撃有無判定・導出の定式化を完了し,(3) も代表例となる困難性仮定に対して提案法の有用性が確認できている.すなわち,本研究の中心課題の当初計画について十分な成果を得ている.ただし,膨大な数の困難性仮定に対して,平成25年度以降の実験を円滑に実施するための実験システムは未完了であり,その点で遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究における重要課題は,膨大な数の困難性仮定に対して迅速な成果を創出できるようにすることである.そこで,まず平成25年度に未完了だった実験システムを開発し,既存の困難性仮定に対して提案法の適用を進める.そして,平成26年度に対象とする困難性仮定のクラスに則して実験システムを拡張し,対象クラスの拡張に遅延することなく,成果創出に務める.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の9月の所属機関異動に伴い実験環境が変わったため,理論的な研究課題の遂行を優先し,実験システムの開発は次年度の研究課題とした.そのため,実験システムの開発に要する金額が,次年度使用額として生じた. 平成26年度に,実験システムの開発に必要となる計算機とソフトウェアの購入に使用する.
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