研究課題
基盤研究(C)
平成24年度においては、交付申請書に記載した研究実施計画の課題のうち、主に移動型並行計算の操作的意味論についての研究、および当初26年度に実施する予定であった部分計算とセキュリティ改善との関連に関する研究のうち、部分的な結果についての研究を行った。前者については、まずbigraphの応用例として代表的な並行計算モデルであるアンビエント計算の操作的意味論について、コードストリーミングモデルへの拡張のための再定式化を行った。すなわち、従来リアクション規則の集合として与えられていたアンビエント計算の操作的意味論について、bighraphで定式化されたコンテクストをラベルとする遷移系の意味論を再定式し、従来の意味論との関連を示した。この結果は、「ソフトウエア工学、分散および米列処理国際会議2013」において発表した。また後者については、研究代表者が過去に提案した並行計算の部分計算体系の拡張が、従来のCSPモデルについては、セキュリティ改善の手段として応用可能であることが、発見された。すなわち認証プロトコルの代表的な例として知られるニーダムとシュレーダーのプロトコルのよく知られたセキュリティホールに帯する対策が、部分計算の適用に他ならないことを示した。この結果は、「International Journal in Foundations of Computer Science & Technology」に掲載された。
3: やや遅れている
当初の研究の目的では、平成24年度においてコードストリーミングを含むbigraphモデルの操作的意味論を完成する予定であったが、年度末時点においてそれらの結果を完全な形で発表するには至っていない。コードストリーミング機能は従来のプロセス代数モデル上で概ね定式化を終えてはいるが、完成しているのはbighraphモデルの部分体系の操作的意味論で、こちらには発表した段階ではコードストリーミング機能は含まれていない。したがってその点で、平成24年度においては進捗が遅れていることは否めない。一方で、プログラム変換とセキュリティの関連については、当初の予定より一部先行した結果を得ており、この意味では、全体の遅れは大きなものではないと考える。
現在までの研究で、アンビエント計算の操作的意味論についてbigraphモデルの研究を踏まえた形での操作的意味論の改良、およびその効果を用いて可能となった双模倣等価性の合同性の結果について、発表予定である。また、従来のプロセス代数モデル上でのコードストリーミング機能の定式化をもとに、同機能の操作的意味論をbigraph上のリアクション規則の集合として定式化を進める。
上記の2つの研究課題のうち、前者は既に結果をまとめ7月に英国で開催の国際会議会議に採録が決定している。次年度使用額は翌年度請求の研究費と合わせ、この国際会議の参加のための旅費および会議登録費として使用する予定である。また、上記の研究課題課題のうち後者について早急に結果をまとめ、いずれかの国際会議での発表を予定しており、翌年度請求の研究費の一部をその参加費用にあてる計画である。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
International Journal in Foundations of Computer Science & Technology
巻: vol. 2, no. 4 ページ: 15-27
10.5121/ijfcst