研究課題/領域番号 |
24500021
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
今井 桂子 中央大学, 理工学部, 教授 (70203289)
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研究分担者 |
鳥海 重喜 中央大学, 理工学部, 助教 (60455441)
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キーワード | 地理情報処理 / 動的ラベル配置問題 / ラベルサイズ最大化 / ラベルの重なり最小化 / 幾何情報検索 |
研究概要 |
本課題においては,モバイル環境などのような動的環境において,地理情報システムに現れる最適化問題を効率的に解くアルゴリズムやデータ構造に関する研究を行っている.昨年度,現在のGISデータがどこまで動的環境に適用できるかや,どのような問題が提起され,それに対してどのような解法が提案されているかなどを体系的に調査し,整理する作業を行った.本年度は,それに基づき,次のような点に着目して研究を進めた.モバイル端末上に表示される地図において,拡大や縮小,表示画面のスクロールや回転に伴って,画面上に表示されているデータをリアルタイムで更新し,表示しなおすという操作が不可欠になっている.これに対しては,昨年度から引き続き,回転する地図において,文字情報が重ならないように配置できる最大の大きさを求めるという,ラベルサイズ最大化問題の解法を求めてきた.この解法は国際会議でも発表し,また,解法を実装し,実用的に有効なアルゴリズムであることを確認した.また,GISに現れる動的環境として航空管制システムが挙げられる.このシステムでは,航空機の情報が文字情報として画面に表示される.このとき,これらの情報は重なったとしても,表示しなくてはならず,管制官が必要な情報を読むために手動で文字情報を画面上で移動させている.このような状況を考えると,他と重ならない情報を多く配置するよりも,多くのラベルが一ヶ所に重ならないように配置することを考えるべきである.このような考え方を基に,これまでとは異なる最適化問題を定式化し,計算機実験を行い,実用的な解法の構築に取り組んでいる.また,地図に含まれる幾何情報の検索を効率化するためにも,幾何情報の位相的情報を取りだす手法についても研究を行ってきた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,動的環境における地理情報システムの分野での理論的研究として,次の3つのテーマに焦点を当てて研究を行っている.(1)動的データ構造の構築,(2)動的データを用いた最適化問題の解法の開発,(3)制御不能流の理論的研究である.動的データ構造と最適化問題の解法は密接に関係していることから,並行して研究を行っている.本年度は昨年度に引き続き,地図データのモバイル端末上での表示に対して,動的環境へ拡張を行う際の問題点や解決すべき課題を整理し,それに対する解法を開発してきた.特に,回転する地図におけるラベルサイズ最大化問題における,多くの場合に対して,多項式時間アルゴリズムを提案し,計算機実験においても,その有効性を示すことができた. すべての情報を指定された大きさで配置すると,情報が重なることになるが,航空管制システムのような実用の場面では,なるべく重なりが分散するような配置を求められる.このような問題に対しても,計算機実験により現実的な解法を提案する試みを行い,また,理論的保証を出来るような解法を開発中である. 制御不能流,特に最小極大流の理論に関しては,問題の難しさから,まだ新しい知見を得るには至っていないが,理論的研究の重要性を考慮し,いくつかの方向からアプローチを続けている.
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今後の研究の推進方策 |
地理情報システムにおける動的環境の下で現れる最適化問題に対して,調査と問題の整理を行い,基本となる操作に対するデータ構造やアルゴリズムの開発を行ってきた.回転する地図に対するラベルサイズ最大化問題は,殆どの問題が多項式時間で解けることが分かったが,まだ,未解決の部分も存在する.まず,この問題に関連するすべての問題を解明し,論文として完成することが当面の課題である.また,ラベルの重なりを少なくするという観点から定式化した新しい問題に関しては,様々な手法を計算機実験によって確認をしている最中であるので,この問題の理論的,実験的研究も引き続き行っていく予定である. 動的環境においても幾何図形の検索の必要性があり,拡大縮小や回転においては位相の変化はないと考えられるので,幾何図形の位相抽出に関する高速なアルゴリズムの開発も行っていく予定にしている. 制御不能流,特に最小極大流の理論に関する研究については,予想される事実の検証のために,まず計算機実験を行う予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
購入を予定していたコンピュータの納期が不確定であったため,当該年度の購入を見送った. 研究期間の3年目であるので,次年度使用額と合わせて,計算機実験用にコンピュータや周辺機器を購入予定である.また,これまでに得られた研究結果を発表するための費用として使用予定である.
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