地理情報システム(GIS)に現れる最適化問題において,動的環境における問題を扱う場面が増えてきたことを受けて,本研究では動的環境において現実に現れる最適化問題に対する実用的な解法を開発することを目的として研究を行ってきた. 現実のGISにおいて現れる最適化問題として,今年度は路線図の自動描画問題や回転する地図に対するラベルサイズ最大化問題,密集している点に対して重なることを許したラベル配置問題などに対して,研究のまとめの作業を行ってきた. 路線図の自動描画手法に関しては,従来の手法では自動描画が難しかった地下鉄路線図の描画に関して解決の糸口が見つかり,これまで既存手法では解が得られなかった東京の地下鉄路線網に対しても,ある程度の品質の解を求めることが出来た. 回転する地図における点ラベルのサイズ最大化問題に対しては,ラベルの形状や配置場所によって問題の難しさや解法が異なっていたが,それぞれの場合分けに対してアルゴリズムとその計算量をまとめ,研究集会で発表を行った.さらに,その研究成果を学術雑誌で掲載することが決定している.密集している点に対しては,ラベルを重ならずにすべて配置することはできない場合がある.そのような状況でもすべてのラベルを配置することが要請されることがある.そのような場合には,重なる度合いを評価する基準が必要となる.これまでもそのような基準は設定されていたが,その基準が適切ではない応用の場面が存在する.本研究ではそのような場面に対応するための新しい最適化基準を設け,それに対する近似アルゴリズムを構築し,アルゴリズムの解析を行い,その結果を国際会議で発表することが決定している.
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