研究課題/領域番号 |
24500023
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
陳 致中 東京電機大学, 理工学部, 教授 (00242933)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 中心列問題 / 固定パラメータアルゴリズム / 乱択アルゴリズム / アルゴリズムの設計と解析 |
研究実績の概要 |
計算困難な中心列問題に焦点を当てた.この問題を解くための固定パラメータアルゴリズムは先行研究でいくつも設計されたが,その中に乱択を利用したものがなかった.本研究で,乱択を利用してより高速な固定パラメータアルゴリズムを設計できるかについて研究を行った.乱択固定パラメータアルゴリズムをいくつか設計して解析した結果,乱択を利用すればより高速なアルゴリズムを得ることができることを証明した. 1つ目のアルゴリズムの期待時間量に含まれる指数項は 2.5s のd乗である.ここで,sは入力文字列のアルファベットのサイズで,dは各入力文字列と出力の中心列間の距離の上界である.sが2のとき,指数項が5のd乗になるので,先行研究で提案されたアルゴリズムの時間量に含まれる 6.73のd乗より十分によい.また,sが4(すなわち,DNA列)のとき,指数項が10のd乗になるので,先行研究で提案された最もよいアルゴリズムの時間量に含まれる 13.18のd乗よりだいぶよい.しかし,アルファベットのサイズが大きくなると,先行研究で提案されたものより悪くなる. 2つ目のアルゴリズムは1つ目に対して,アルファベットのサイズが大きいときに威力を発揮する.具体的には,その期待時間量に含まれる指数項は 2s+4 のd乗である.sが20(すなわち,蛋白質)のとき,指数項が44のd乗になるので,先行研究で提案された最もよいアルゴリズムの時間量に含まれる 47.21のd乗よりよい. 3つ目のアルゴリズムは1つ目と2つ目を融合したもので,両方のアルゴリズムの優れた点を持っている.その期待時間量に含まれる指数項は,sが2のとき5のd乗,sが4のとき9.81のd乗,sが20のとき40.09のd乗である.したがって,この3つの重要な場合においては,先行研究で提案された最もよいアルゴリズムの時間量に含まれる指数項よりだいぶよい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予想通りの結果が得られて,国際学術誌論文2本と国際会議論文1本を発表することができた.
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今後の研究の推進方策 |
生物系統樹のrSPR距離を求める問題が計算困難であるが,重要であるため今まで盛んに研究されてきた.この問題を解く既知のアルゴリズムはほとんど固定パラメータアルゴリズムである.その固定パラメータアルゴリズムはすべて分枝限定法に基づいており,不要な探索を避けるためにこの問題の近似アルゴリズムを利用している.既知の近似アルゴリズムは約20年前に設計された極めて単純なもので,近似率3を達成する.よりよい近似率を達成する近似アルゴリズムを設計すれば,固定パラメータアルゴリズムの速度改善に利用できる. 本研究では,rSPR距離を求める問題の近似アルゴリズムで近似率が3より小さいものを設計して解析する.既知の近似アルゴリズムが単純なものにもかかわらず20年もの間改善されていないので,改善が難しいと思われる.しかし,乱択など新しいアイディアを利用して改善を目指したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
海外出張旅費として使った結果,僅かな金額が残った.
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次年度使用額の使用計画 |
僅かな金額しか残っていないが,次年度の直接経費に足して,より柔軟な使い方をしたい.現時点で海外出張旅費として使うことを考えている.
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