研究課題/領域番号 |
24500024
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
近藤 通朗 東京電機大学, 情報環境学部, 教授 (40211916)
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キーワード | 部分構造論理 / residauted lattices / Galois connection |
研究概要 |
部分構造論理の代数的意味論としてresiduated latticesを考察している.この論理の代数的意味論(residuated lattices)による完全性定理はすでに示していたため,様相演算子を追加した様相部分構造論理の性質は,residuated latticesに様相演算子に対応する演算子を追加した代数系の性質を調べればよいことがわかる.そこで,様相演算子としてGalois connectionを追加した代数系の性質を調べることが本研究の主題となっている. まず平成24年度に一つの演算子(universal qunatifier)を追加した体系の性質を調べ,一般化したmonadic residuated latticesの特徴付け定理を証明した.次に平成25年度には,residuated lattices上にガロア結合となる2組の様相演算子を追加した体系について考察した.この体系において,strong Galois connectionが存在するための必要十分条件がrelatively complete な部分代数が存在することであることを示し,strong Galois connectionをもつresiduated latticesの特徴付け定理を得た.これにより,これまで得られていたmonadic Heyting代数,monadic BL代数,monadic Rl-monoids等における結果が統一的な形で得られることがわかった.またこの特徴付け定理から,monadic BL代数やmonadic Rl-monoidsにおける主要な結果が誤りであることがわかり,修正した正しい記述を与えることができた.これらの結果については,現在論文を執筆中であり,近いうちに学術雑誌に投稿予定である.この結果は,平成26年度に開催される国際会議でも発表する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度にはuniversal quantifierとよばれる一つの演算子にだけ注目し,その特徴付け定理を示したが,次年度(昨年度)には,一組のGalois connectionをもつ(したがって演算子を2つもつ)可換なresiduated latticesの特徴付け定理を示すことができた.この結果から,これまでの論文で得られていたいくつかの結果に誤りがあることがわかり,正しい記述を与えることができた.ここまでが予定していたものである. さらに得られた予定以上の結果として,J.Jariven(フィンランド),W.Dzik(ポーランド)両教授との共同研究により,一組のGalois connectionと新たにFisher-Serviの公理を持つHeyting代数の表現定理を示すことができ,学術雑誌に投稿中である.この結果により,少なくとも1985年以来未解決であったtense 直観主義論理の決定可能性問題について,大きな進歩があった.この論理体系は,我々の提案した論理体系Int2GS+FSと同値であること,Int2GS+FSは以前我々が提案した論理体系IntGCのfusionになっていること,また,IntGCは決定可能であること(我々の結果)から,決定可能な論理のfusionがまた決定可能であることを示す問題に帰着できることがわかった.fusionに関する結果については既に他の研究者による結果があるため,それを詳細に検討することで,この未解決問題は肯定的に解決できるめどが立った.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終目標である「Galois connectionをもつ非可換なresiduated latticesの特徴付け定理」の証明を完成させる.可換な場合については得られたので,証明の工夫は必要であるが,研究課題の達成は可能であると思う.また,これ以外にも以下のように内外の研究者と共同研究やセミナーをおこなう.また情報交換は電子メールを中心に行うが,国際会議などを利用して海外の研究者との研究打合せを行い,研究を遂行する: 1.Int2GS+FSの決定可能性:J.Jariven(フィンランド),W.Dzik(ポーランド)両教授との共同研究を夏あるいは来年2月に行う.これまでに,彼らとの研究成果は3編の共著論文として,学術雑誌に発表しているが,現在4つめの共著論文を学術雑誌に投稿中である. 2.normal BL代数はMV代数か?というTurunen教授(フィンランド,現在オーストリア在住)が考えている問題に対して,この解決を目指し共同研究を行うことにしている.Turunen教授は今年の秋にフィンランド帰国予定であり,冬にセミナーを中心として共同研究を行う予定である. 3.チェコ科学アカデミーの研究者であるM.Vita氏と,residuated lattices上のt-filterの特徴付けに関する研究を行う.6月にポーランドで開催される国際会議に参加し,そこでセミナーを行う予定である. 4.次年度以降の主要な研究テーマにつながる,「部分構造論理におけるstateの性質」に関する先行研究についての論文の精読を始める.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年9月に開催されたチェコでの国際会議へ参加し発表する予定でいたが,学内行事のためこれを見送った.これにより旅費および参加費の支出をしなかったこと,また次年度に多くの研究会や国際会議が予定されているため計画よりも多くの予算が必要とされることが次年度使用額が生じた主な要因である. 次年度は,研究最終年度であるため,これまでに得られた結果を国際会議で発表したり,学術雑誌へ投稿・発表したりという形で研究を進める. 第一には,夏あるいは来年2月にフィンランドの共同研究者(Jarvinen氏)のもとで研究を行い,本研究課題の完全な達成を目指し,論文として学術雑誌に発表する. また,本研究課題から派生したいくつかの問題およびTurunen教授自身の問題について共同研究を行う.このように海外研究者とのセミナー,研究打合せを行い,国内の研究会や国際会議での発表を中心に研究を進める.そのため,フィンランドでの研究およびポーランドでの国際会議発表(70万円),フィンランドでのセミナー(25万円)を使用する予定である.また,国内研究者との情報交換やセミナーのため,国内旅費として15万円を予定している.
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