研究実績の概要 |
本年度の主たる研究成果は、著名なManagement Science(MS) 誌(Vol.60,No.3)に離散最適化の新解法に関する研究成果が掲載された。MS誌にはファイナンスやマーケティング等13の独立した研究分野があり、最適化はその基礎的分野である。離散最適化の応用として開発した非凸離散最適化解法は、ゲノム科学や統計学で問題となっている、いわゆる‘次元の呪い’と呼ばれる技術的問題点を解決できる可能性が高い(9th International Statistics Day Symposium(ISDS)で発表)。Hohと Ott (Nature Reviews Genetics, 2003)によれば、入力変数(説明変数)の数が観察(サンプル)データの数よりもはるかに多い高次元回帰のとき、‘次元の呪い’が発生し従来の最小二乗法(OLS)を用いても予測の精度やモデルの複雑さ(関与している多くの変数を見つける)の両面でうまく働かないことが知られている。過去数十年間に亘ってこのOLSの欠点を克服するためにいくつもの回帰分析法が開発された。その代表的な分析法がRidge回帰(Hoerl and Kennard 1970)とLasso回帰(Tibshirani 1996)である。RidgeはOLSの欠点を大きく克服はしているが、不十分である。そこで開発されたのがLassoである。Lassoにより説得力のあるモデルが構築できるが、Lassoはサンプルデータ数以上の説明変数が関係した複雑で高精度のモデルの構築はできなかった。また、変数選択の精度にも問題があった。最近の研究の潮流としては、非凸計画問題を用いた研究が主流になりつつある(Aravkin 等, J. of Machine Learning Research, 2014)。本非凸解法を用いたゲノムデータ(変数10032個、データ数75)の分析では、顕著な研究成果が得られている。
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