平成27年度においては,エクサスケール計算環境に向けた高速フーリエ変換(FFT)として,Xeon PhiクラスタおよびFujitsu PRIMEHPC FX100における並列一次元FFTの実装について検討を行った。 分散メモリ型並列計算機において並列一次元FFTを計算する際には,全対全通信が3回行われることから,計算時間の大部分が全対全通信によって占められることになる。そこで,演算と通信を分割しパイプライン方式でオーバーラップさせることで計算時間の短縮を図った。演算と通信を分割しパイプライン方式でオーバーラップさせる場合,通信メッセージサイズの分割数(パイプラインの段数)を大きくすれば,オーバーラップの割合が高くなる。その一方で,通信メッセージサイズの分割数を大きくすれば,通信1回あたりの通信メッセージサイズが小さくなるため,通信バンド幅も小さくなる。したがって通信メッセージサイズの分割数には最適な値が存在すると考えられる。そこで,最適な通信メッセージサイズの分割数を自動チューニングする機構を実装した。 Xeon PhiクラスタおよびFujitsu PRIMEHPC FX100における性能評価の結果,従来の並列一次元FFTの実装よりも高速であることを確認した。 本年度の成果は,エクサスケール計算環境においてFFTを必要とする多くのアプリケーションで計算時間を短縮することができるものと期待できる。 また,平成27年度に行った研究成果をまとめて国際会議や学術雑誌等に論文を投稿する予定である。
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