研究実績の概要 |
階層グラフの自動描画法に関する従来の研究の多くは直線描画(連続する階層の頂点間を結ぶ各辺を直線で描く描画)を求めるものであった.しかし,グラフの頂点数や辺数が多くなると,直線描画では辺の交差数が多くなりすぎ,非常に見づらくなることがある.本研究の目的は,複雑な階層グラフであっても明確な直交描画(辺を垂直・水平線分からなる経路として描く描画)を求め得るアルゴリズムを開発することであり,その手順として以下のようなものを考えた. (1) 階層をまたぐ各辺上にダミー頂点を設け,共有化処理を行う.(2) 辺の集合を高階辺に分割する.(3) 各階層上の頂点の配置順序を定める.(4) 各階層における頂点の配置座標を定める.(5) 辺を描き,直交描画を求める. 平成24~25年度では,主にステップ(2), (4), (5)に関する研究を行っていた.特にステップ(5)に関しては,各高階辺を構成する水平・垂直線分の配置を求める問題を,辺に重みを付けたある有向グラフの最小帰還辺集合のうち,辺の重みの和が最大のものを求める問題として定式化し,それに対する発見的手法を提案した.また(4)に関しては,直交描画中の水平線分の長さの総和が最小となるように頂点座標を決定する方法を作成した. 平成25年度までは,ステップ(1)でダミー頂点の共有化処理を行うために,本申請者らが平成23年に開発した方法を用いていたが,平成26年度は,描画中の線分の混雑をより緩和し,辺交差数を削減するために,ステップ(1)において,新しく開発したダミー頂点共有化手法を用いることにした.またステップ(5)に関して,高階辺の描画を行う際に設けていた制約を若干緩めることにより,辺交差数が更に少ない描画を求める方法を作成した.そして計算機実験により,これらの工夫が有効であることを確認した.
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