研究課題/領域番号 |
24500055
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
横田 隆史 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90334078)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 相互結合網 / 並列処理アーキテクチャ / 輻輳制御 |
研究概要 |
【先行制御の基本機能の検討】パケットのノード間での転送においてパラレル(P)―シリアル(S)―(通信媒体)-S―Pの各変換が繰り返されることに着目すると、極細粒度の情報であれば通常のパケット配送制御の数分の1の遅延で伝送可能である。従来手法で32ビットを1単位としていた制御情報を、8ビット程度の極細粒度情報に分割し低遅延でノード間伝送させる手法を考案した。また、輻輳制御の検討の過程で、パケット流量を制御する基本コンセプトを発案した。 【実験評価環境の構築】先行研究による並列相互結合網シミュレータに、上記の極細粒度制御情報の伝播機構を組込み、任意の倍率で伝送できる評価フレームワークを構築した。また、当初の計画に加え、実験評価プロセスの効率的な推進を狙ってGPGPUを用いた高速シミュレータの構築も試みた。 【先行制御による輻輳制御メカニズムの検討】まず、制御情報の極細粒度化によりデッドロック等の問題が生じないことの検証を行った。またさらに、先行研究による制御方式をベースとし、極細粒度・低遅延での制御情報伝送に対応させた制御方式を検討し、その機能を上記シミュレータに組み込み評価した。転置・シャッフル・ビット反転・ビット逆順・ビット回転・トルネード・ランダムの典型的な各種通信パターンについて、一斉同期通信および定常通信の状況を想定したシミュレーション評価を行った。 【成果の公表】計算機アーキテクチャ分野および高性能計算分野それぞれの国内研究者の研究会の共催による合同研究会(HOKKE-20)において予備評価の結果を公表した。またGPGPUによるシミュレータの高速化の試みについて情報処理学会第75回全国大会にて発表した。その他、上記を含めた研究成果を論文誌1編(掲載予定)、国際学会論文2編、学会研究会8編、大会13編の論文により公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
制御に供する情報を極細粒度なものに分割することで、本来送ろうとするデータの本体に先行させて伝播させる機構自体は、シミュレータにより機能が確認され、意図したとおりに機能することが確認された。こうして基盤的な技術の見通しは付けられたことは当初の計画のとおりである。様々な通信状況を想定した包括的な実験評価では、ほぼ理想的な転送特性を得られたトルネード転送を始めとして多くのケースで大きな性能改善を果たせることがわかった。一方で、本研究による低遅延の制御情報を用いても期待したほどの輻輳抑制が得られないケースもあることが明確になっている。 輻輳制御の手法については、検討の過程において広域の流量制御を基本とする新規なアイディアを得ることができた。これは交通流の制御(ランプメータリング)から着想を得たものであり、パケットの本体データに先行して伝播可能な細粒度制御情報の機構を活かせるものと期待できる。 さらに、当初計画ではHDLにより評価の加速を狙っていたが、これに加え簡略化モデルとGPGPUを導入することによるシミュレーションの高速化の検討と実装実験を行い、目的達成の見通しを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
【基本メカニズムの完成・評価】先行研究による輻輳制御をベースとした手法について、通信パターンなどの転送条件によらず性能向上を得られるよう改善する。また、流量制御の基本アイディアを、本研究課題による極細粒度・低遅延伝播の機構に適合する形で具体的な輻輳制御手法にまで発展させ、新しい発想に基づく新たな輻輳制御手法としてまとめる。ソフトウェアシミュレータによる実験評価を中心として、様々な転送状況を想定した評価を行い、有効性を実証する。 【同期・管理機能の基礎検討】本研究課題による手法では、本来まとめて送るべき情報を極細粒度に分割して伝播する場合、不完全な情報が順不同かつ非同期にやり取りされることから、同期およびシステム管理に適用した場合の挙動や動作特性について厳密な検討が必要である。こうした機構は通常のパケット転送と並行して行われることから、機能を厳密に証明することは難しいものと考えられる。このため年度後半ではシミュレータに組み込みシミュレーションによる実験評価の環境まで整える。 【成果の公表】国内研究会、国際学会等において論文を公表し、口頭発表することで、本研究課題の成果を国内外に広く知らせる。また、基本メカニズムまでの成果をまとめ学術誌に論文投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の成果の発表ならびに関連する研究の情報収集のために使用する。
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