研究課題/領域番号 |
24500055
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
横田 隆史 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90334078)
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キーワード | 相互結合網 / 並列計算機アーキテクチャ / 輻輳制御 / ルーティングアルゴリズム |
研究概要 |
(大規模化への対応と新しいシミュレーション手法の創出)セルオートマトンの考え方を導入することで,モデル化作業の効率とシミュレーションの速度を劇的に向上させる手法を考案した。ルータが内部に保持するパケットの状況をセルオートマトンの考え方に基づいて簡略化しモデル化する。これによりモデル化からシミュレータへの実装までの作業を大幅に効率化することができる。さらにシミュレーションの速度も従来手法の3.5~5倍の高速化が達成された。さらにこの手法はGPGPUでの演算と相性が良く,さらに16倍の高速化を達成することができた。この結果100万ノード規模のシミュレーションを現実的な時間で行えるようになった。さらに手法自体を抽象化して新たな高速シミュレーション手法として昇華させた。 (ルータ内部調停アルゴリズムに関する知見)パケットの転送方向を決定するためのルーティングアルゴリズムは盛んに議論されてきたが,クロスバスイッチ上でのパケットの衝突を調停するアルゴリズムに関しては注意深い検討がなされていなかった。シミュレーション実験により系統的に調査した結果,調停アルゴリズムにより通信性能に数倍の差が現れることが判明し,この知見をまとめた。 (成果の公表)セルオートマトンの応用について関連の国際会議(AFCA,査読付き)で発表した。またGPGPUでのシミュレーションについて情報処理学会全国大会で講演した。調停アルゴリズムに関する新しい知見について国際会議(CSCI,査読付き)で発表した。その他,上記も含め国際会議(査読付き)10件,国内研究会7件,国内大会17件の発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題はその課題名が示すように超大規模システムを前提とした手法の創出を目標としている。その検討過程ではシミュレーションによる評価が不可欠であるが,現在よく用いられている1000ノード程度までの中・大規模システムでは不十分と考えている。本年度の実施内容はさらにその1000倍である100万ノードをターゲットにしたものでありセルオートマトンの考えの導入とGPGPUの使用により見通しを立てることができた。 また,本年度の実施の過程において,本研究課題と密接に関連する内容について重大な知見(ルータ内部調停アルゴリズムに関する知見)を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度からの成果から継続して,輻輳情報をはじめとした相互結合網内の情報を先行的に伝播させる基本的なメカニズムの検討は進んでおり,当初の計画のとおり発展の段階に進める。本年度は,まず流量制御の基本アイディアをまとめたうえで系統的なシミュレーション評価を行い,効果と問題点を明確化する。これは前年度から継続して検討している過程にあり,現在までに通信の条件等によって相互結合網内の動的な状態の変化が急激でしかも安定しないケースがあることが判明している。動的な状態変化が輻輳制御の効果を抑制しているものと推測されるため,本年度の成果をもとに十分に大きなシステムでのシミュレーションと内部挙動の把握を進め,まず大規模相互結合網での動的挙動,特に制御作用とその応答について新しい知見を得る。それをもとに効果的なアルゴリズムを創出し,有効性を実証する。 また上記と並行して,同期機構や管理機能に関して,これまでの研究の過程で考案した方法を検討し,シミュレータへの実装と評価を開始する。 さらに本年度の実施過程で得られた知見(ルータ内部調停アルゴリズムに関する知見)についても,シミュレーション実験の結果と大きく関連する可能性が大であるため,並行して検討を進める。
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