研究課題/領域番号 |
24500055
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
横田 隆史 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90334078)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 並列計算機 / 相互結合網 / 輻輳制御 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
(超大規模化への対応のための新しいシミュレーション手法の確立)セルオートマトンにおける大規模並列演算手法を相互結合網のシミュレーション分野に導入することで簡素ながら実用的で並列度が高いシミュレーション手法を提案し、それをGPGPUの利用による高並列実行環境で高速に処理する手法をまとめ、simulation kernelとして確立した。 (相互結合網の先行制御手法の考案)相互結合網における輻輳制御(congestion control)の分野の研究に取り組んだ。まず輻輳の発生から解消に至るまでの結合網内の挙動に関する知見が十分でないことを確認し、これを出発点とした。結合網上での通信の干渉により輻輳が発生するが、具体的な発生・拡大・解消の挙動が不明確だった。拡がりのある結合網の挙動を時系列に表現しなければならないことに起因するため、直感的に理解できる表現形式を物理学における粒子系(自己駆動粒子)分野の研究成果からのヒントにより提案した。そこからの知見と、研究者自身の既往研究の成果とを結びつけることでシンプルかつ強力な輻輳制御手法を考案し、シミュレータによる評価を行った。 【成果の公表】セルオートマトンとGPGPUによるsimulation kernelの成果を国際会議(PDPTA, 査読付きフルペーパー)で発表し、上記の輻輳制御手法をAnnual Meeting on Advanced Computing System and Infrastructure (ACSI 2015, 査読付きフルペーパー)にて発表、さらにACSI国際学会論文のextended versionが情報処理学会論文誌に採択されている(発行予定)。この他、上記を含めて、学協会誌論文2編、査読付き国際会議論文4編、査読付き国内英語会議論文1編(ACSI)、国内学会口頭発表15件の発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GPGPUを用いたsimulation kernel技術の確立により、試行錯誤を伴うが超大規模であるため評価に多大な時間を要する問題点を大きく緩和できる見通しをつけることができた。 今年度は、上記のシミュレーション評価のためのツールに加え、視覚的に表現することで理解を加速するツールを考案したことにより、先行制御のための議論を大きく進めることができた。その議論の中で多くのアイディアが考案されている。その中の1つは口頭発表および学協会誌論文の成果につながった。 ただし、本研究課題の提案当初の計画では、輻輳情報を先行的に伝播させることに重点を置いた議論を行う予定であったが、上記のツールを用いた研究の過程で、輻輳情報の伝播速度よりもむしろ情報の利用のしかたの議論を優先させるべきとの結論に達した。この発想の転換により新しい手法の考案に至った。このような軌道修正を伴ったものの短期間のうちに論文化にまで至ったため、おおむね順調と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果である新手法をもとに高度化し効果の向上をねらう。また、今年度の議論の中から出たアイディアのいくつかをシミュレータに実装し効果を評価する予定である。これらのアイディアには、これまで全くの未検討だったメカニズムも含まれることから、現状のシミュレータでは対応できない。このため、評価手法を含むシミュレーション手法の検討から始める予定である。 また、今年度の研究過程で得られた実験評価結果の中には、現在の知見だけでは論理的に説明し切れないものがあることが判明している。今年度の成果により視覚化のためのツールを構築したが、それでも不十分である。拡がりのある空間に分散し相互に影響しあう多数の要素に対する制御効果を、時系列にかつ定量的に表現する手法が必要である。
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