研究課題/領域番号 |
24500057
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
安藤 英俊 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (50221742)
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研究分担者 |
鳥山 孝司 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (50313789)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | GPU |
研究概要 |
平成24年度は1.表面張力計算手法の検討,2.固体を含めた多相流体計算スキームの検討,3.上記手法のGPU上への実装と評価,4.圧力ポアソン方程式のための反復計算の拡張,5.可視化手法の拡張,を行なってゆく計画であった. このうち1.の表面張力計算手法の検討についてはIBM(Immersed Boundary Method)とLevel Set法をGPU上で効果的に実装することにより表面張力計算のためのなめらかな法線の獲得に成功し,予定通り実装することができた.2.については固体部分についてもカラー関数をVOF法で同様に表現した上で,流体と異なり外力や加速度の総計をとることで剛体としての運動を実現することに成功した.これをGPU上に実装し,3.に相当する固気液多層流体シミュレーションを実行・評価したところ数値的に安定で保存性に優れた手法であることが確認された.これでGPU上の固気液多層流体シミュレーションの基盤が確立された. さらに4.圧力ポアソン方程式のための反復計算の拡張については,前処理付きクリロフ部分空間法をGPU上で実装すると共にいくつかの前処理手法を比較検討し,マルチグリッド前処理を用いた場合に非常に優れた収束特性を示すことが確認された.さらに安定的な収束性を確保するためには通常は倍精度や4倍精度の演算が必要となるところを独自の工夫を施すことで単精度計算だけで十分な収束性と安定性を実現した.これによりメモリ消費量および計算速度の点で従来手法よりも圧倒的に優れた手法の開発に成功した. 5.可視化手法の拡張については従来の科学的可視化のみならず,写実的可視化を可能とするGPU上での高速レイトレーシング法を実装し,高品位な可視化を実現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本的に計画していた項目については概ね当初の想定程度かそれ以上の成果を達成した.特に固気液多層流体シミュレーション自体が初年度にしっかりと実現できたことは今後の研究推進にとって大きな意味を持つ.また密度差の大きな多相流体シミュレーションにおいて最も計算時間を要する圧力ポアソン方程式の数値解法に関して,単精度計算だけで高速・安定的に求解可能な手法を開発・実装できたことはGPUを用いた高速数値計算の実現のための強力な手法を獲得したことになる.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に開発されたGPU上での固気液多相流体計算の手法を元に,様々な拡張を行う.平成25年度には具体的には以下の1.にあるように伝熱現象の導入その他の新たな物理現象の考慮を随時行い,GPU上で実装・評価することでそれらを更に改善・発展させてゆく.その上で様々な問題へと適用し,評価・見直し・改善を行う.さらに分散可視化手法についても可視化自体の拡張と映像圧縮手法の拡張を随時行い,高速・高品位な科学的可視化を実装してゆく.また,24年度に実装したレイトレーシングによる可視化についても分散可視化を検討する.ただしレイトレーシングを行うためには単純な分散可視化は難しく,可視化するノードが他ノードのデータを必要とする可能性が高い.一時的に必要なデータを集約した上で分散レイトレーシング行うなどの工夫が必要となるため,そのための効果的な実装方法についても検討する.以下が具体的な研究開発項目である. 1.多相流体計算スキームの再検討:新たな物理現象の考慮,他/2.可視化手法のさらなる拡張:ボリューム可視化,粒子追跡法の分散対応/3.計算・可視化の処理と通信の最適化:GPUによる処理とネットワークの非同期通信の最適化,GPU内カーネルの非同期実行/4.画像圧縮手法の発展
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は発売が期待されていた最新機能対応のGPUが年度末ぎりぎりまで登場しなかったため,従来アーキテクチャのGPUを数枚購入して評価・実装を行った.今年度はようやく数値計算にとって魅力的な機能を搭載した新アーキテクチャのGPUが発売されるので,研究費の幾分かはその購入に当てる.GPUクラスタを組むためのPC部品やネットワーク機器等も必要となる.また研究成果発表のために,国際会議等へ複数回の出張旅費,論文掲載料等を必要とする.
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