研究課題/領域番号 |
24500057
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
安藤 英俊 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (50221742)
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研究分担者 |
鳥山 孝司 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (50313789)
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キーワード | GPU / 多相流体シミュレーション / 数値計算 / 可視化 |
研究概要 |
平成25年度は1.多相流体計算スキームの再検討,2.可視化手法のさらなる拡張,3.計算・可視化の処理と通信の最適化,4.画像圧縮手法の発展,を行ってゆく計画であった. このうち1.についてはGPUの限られたメモリ容量の圧迫を最小限に抑えながら高精度な界面獲得および移流を実現するスキームを実装し評価した.具体的には数値計算に用いる格子のうちVOF(Volume of Fluid)値を格納する格子の解像度を他の物理量を格納する格子と比較して高くする手法を導入した.VOF値の解像度は界面形状に直接的な影響を及ぼすが,メモリ使用量全体に占める割合は高くないため,この部分の格子の解像度のみを上げることは効果的である.また熱流体計算の基礎的要素としてブシネスク近似を導入した.2.の可視化手法についてはGPUクラスタ環境における分散レイトレーシングを実現した. さらに3.の要素として可視化の負荷のロードバランスを自動的にとる仕組みを開発・実装した.これにより可視化における描画時間が短縮化され,GPUの効果的利用による高速化が可能となった.4.については分散可視化によって作成された複数の画像をネットワーク上で収集する際に,高速な圧縮を用いることで転送時間を短縮し,全体の計算および可視化時間の短縮を図った.圧縮手法としてはウェーブレット変換を用いる手法をベースとした.フレーム間圧縮は行っていないが,これは前述したロードバランスの仕組みによりフレームのサイズが動的に変更されるためである.結果としてギガビットイーサネット環境においては事前圧縮が転送時間の短縮にある程度有効であったが,Infiniband環境においてはネットワーク自体が高速なために圧縮を行うほうがむしろ処理に時間がかかって遅くなる結果となった.これらは環境条件に応じて使い分けられるべきである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に予定以上の成果を達成したため,今年度は余裕を持って開発を進めることができた.界面獲得に関する部分の技術的アイディアをじっくりと検討し実装することができたし,また圧力ポアソン方程式の数値解法に関しても各種パラメータの再検討と評価を行えた.またクラスタ化に向けたマルチGPU化なども実現できた.これらの技術は今後の大規並列化に向けて重要である.また分散レイトレーシングを用いた可視化によって従来の科学的可視化で作成される画像とは次元の違うリアリティのある画像の作成が可能となった.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度までに開発されたGPU上での固気液多層流計算および分散可視化手法を元に,最終年度として当初目標であった拡張を行ってゆく.まず計算スキームの最適化および最新GPUに対応した高速化の実装を随時行う. 熱流体計算への拡張として沸騰・溶解・昇華等の計算スキームへの伝熱工学の導入を試みる.また最新GPUの特性にあったアルゴリズムの設計および実装と評価を行う.そしてシミュレーションの応用としての災害シミュレーションへの適用や相変化する多相流体計算への応用を試みる.また可視化についてはレイトレーシングを更に推し進めてフォトンマッピング等の高度な手法の導入を検討する.またGPUによる処理とネットワークの非同期通信の最適化,GPU内カーネルの非同期実行等の導入を検討する.以下が具体的な研究開発項目である. 1.多相流体計算スキームの再検討,2.熱流体計算を考慮した計算スキームの開発,3.新たな計算スキームのGPU上への実装と評価,4.多相流体・熱流体問題への適用と評価,5.可視化手法のさらなる拡張,6.計算・可視化の処理と通信の最適化
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