研究最終年度として計画通りに,多相流体計算スキームの再検討,熱流体計算を考慮したスキームの拡張,新たな計算スキームのGPU上への実装,多相流体問題への適用と評価,可視化手法の拡張と全体処理の最適化,等について研究開発を行った. 計算スキームとしては多相熱流体計算に十分対応するために圧力ポアソン方程式の解法の拡張と効率化を行った.具体的にはマルチグリッド前処理付きCG法を単精度演算のみの組み合わせでも効率よく収束させる手法を効果的にGPU上に実装した.また大規模計算への対応のための検討として,CPU側の比較的大容量なメモリ上にデータを置きつつGPU上での計算をデータ通信と非同期処理することで効率的に実現する手法を考案した. 計算スキームに伝熱工学の効果を導入するために温度による体積変化と密度変化を導入し,さらに相変化による急激な密度変化が起きても安定的に計算が可能となる手法を導入した.さらにこれらを最新GPUの特性を考慮した上で高速に計算可能な実装方法を考案した.CPU/GPUの役割分担も再検討し,部分的な計算をCPU側に負担させる余地の検討とスキーム上でのタイミングについて検討・評価した.また多相流体計算の災害シミュレーションへの適用として,障害物付きのダムブレーク問題と変形・移動する固形物が単一の場合の固気液多層流体シミュレーションの実行に成功した. GPUクラスタ環境における分散可視化についても動的負荷分散に対応したレイトレーシングの実装を行い,これにさらにフォトンマッピングを組み合わせる手法を考案した.映像の高速転送のためのフレーム間圧縮技術については代表的な技術を試験的に実装して評価したが,低速なネットワーク環境下では効果が高い一方でInfiniband等の高速なネットワーク環境下では圧縮処理を行わないほうがむしろ高速に処理可能であることが改めて確認できた.
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