研究課題/領域番号 |
24500065
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
籠谷 裕人 岡山大学, 自然科学研究科, 講師 (50271060)
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キーワード | 非同期式回路 / パイプライン / 簡単化 / 制御フローグラフ / SDI遅延モデル |
研究概要 |
まず、パイプライン化された制御フローグラフを簡単化する二つのアルゴリズムのうち、状態遷移グラフ(有限オートマトン)を使用する方式のものについて、実装を完了した。計算量の上界は大きいが、実用性調査の結果、初期ノード数が8個の小規模な仕様については、1秒以下での簡単化が可能であることが判明し、また20個程度の中規模な仕様についても、数分から1時間以下で簡単化が実施できたことから、通常の仕様では理論上の上界ほどの計算量を要しないことがわかった。ただし、条件分岐や並列処理が多数含まれる仕様については上界に近づくことが予想され、そのようなベンチマーク仕様の策定が必要である。一方、簡単化アルゴリズムのうち、計算量を抑えることを目的としたものについては、その正当性の検証を行っているが、これについては難航し、未完了である。 次に、基本演算の所要時間を完全に未知で自由に変動できるとするのではなく、SDI遅延モデル(素子の設計遅延時間に対する変動量の上限が他の素子と相対的に定まるとするモデル)に基づいて所要時間が変動すると想定した場合の回路量削減手法を検討した。ここではその初期段階として、条件分岐は存在しないと仮定した。この手法は、制御フローグラフ中のあらゆる有向閉路について設計遅延量の合計を算出しておき、その最大値付近の遅延をもつ閉路グループとそれ以外の閉路との遅延差が大きい場合に有効となる。この条件を満たした場合、制御フローグラフ内の一部の待ち合わせは、その順序が静的に定まるため待ち合わせそのものが不要となる。また並列に実行される可能性のあった一部の基本演算どうしは、それらの実行順序が静的に定まり同じ演算器を共有できる。これらの出現条件を厳密に検討し、その検出手法をアルゴリズム化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
制御フローグラフの簡単化アルゴリズムについては、第二のアルゴリズムが当初の予定と異なり、正当性検証と完成が遅れている。また、本来予定していたパイプライン深度の最適化については着手できていない。しかしながら、もともと予定になかったSDI遅延モデルを導入することによる制御フローグラフ最適化について、入力仕様に制限はあるもののその範囲内でアルゴリズムが作成でき有効性を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、第二の簡単化アルゴリズムの正当性検証を早急に進める。これと並行して、これらアルゴリズムの評価基盤として、ベンチマークとなる大規模仕様群を策定する必要がある。ノード数、並列度、パイプライン深度、条件分岐数などのバリエーションを含み、実用的な機能を含んだ回路の仕様を複数作成する予定である。 さらに、これらのアルゴリズムの高速実行を目的として、並列プロセッサまたはGPUの使用を検討する。そのためのアルゴリズム並列化を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
パイプライン深度最適化の課題に着手できなかったため、整数計画問題ソルバーおよびそれを動作させる計算サーバの導入を行わなかった。しかしこれに代わり、簡単化アルゴリズムの並列化を新たに検討することにしたため、これを動作させる並列プロセッサまたはGPUを搭載した計算サーバを導入する必要がある。 簡単化アルゴリズムの並列化のため、大規模な並列プロセッサまたはGPU、またはその両方を搭載した計算サーバを導入する。また、論文発表を行うための費用として使用する。
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