研究課題/領域番号 |
24500073
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
小山 明夫 山形大学, 理工学研究科, 教授 (60315679)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 可視化システム / 無線P2Pネットワーク / アドホックネットワーク / プロトコル / 同期手法 |
研究概要 |
申請者はこれまで,アドホックネットワークのトポロジーやパケットの流れを可視化するシステムの研究を行ってきた.その中で各ノード間の時刻同期を正確に行う手法や効率的なログ収集手法の考案および応用システムへの適用はまだ課題として残っていた.本研究では,これらのまだ解決されていない課題を3年間で解決し評価を行っていく. 平成24年度は,無線P2Pネットワークの可視化モデルの構築,3次元描画方式の開発,各ノード間の時刻同期手法の考案と実装,効率的な情報収集・転送手法の考案と実装の研究を行った. 最初に行ったことは,無線P2Pネットワークのトポロジーやパケットの流れを可視化するためのモデルの構築である.なお,無線P2Pネットワークとして,アドホックネットワークのモデル構築を行った.次に3次元描画方式の開発を行った.これは,今まで開発した2次元描画方式では,高さの情報がわからないので,3次元描画にすることにより高さの情報を描画することを可能とし,より現実を反映した可視化が可能となった. これと並行して研究協力者の大学院生と学部生が時刻同期手法の考案と実装および効率的な情報収集・転送手法の考案と実装を行った.パケットの流れを可視化するには,ノード間で送受信されるパケットの送信時刻と受信時刻が必要になる.したがって,ノード間で時間が合っていないと正確なパケットの流れを可視化できなくなる.考案した時刻同期手法で実験を行った結果,3ホップで誤差が10ms以内の時刻同期を実現した.これは,実用に耐え得る値である. また,効率的な情報収集・転送手法の開発は,大規模なP2Pネットワークを考えた場合に重要な機能となる.ノード数が増加しネットワーク規模が大規模になっても短時間で正確に情報を収集し転送する手法の考案を行い,実機実験を通して評価を行った結果,従来手法と比較して約70%転送時間を削減することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要でも述べたように,平成24年度は,アドホックネットワークの可視化モデルの構築,3次元描画方式の開発,各ノードの時刻同期手法の考案と実装,効率的な情報収集・転送手法の考案と実装の研究を行い成果を得た.これは,当初予定していた計画通りに研究が進んだことになる.これにより,目標の一つであるアドホックネットワークの3次元可視化や効率的な情報収集・転送方式の開発を完了したことになる. 以上の理由により,現在までおおむね順調に研究が進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,ネットワーク上のノード情報やリンク情報を可視化する手法の考案と実装,APIの設計と実装,各種プロトコルや応用システムの可視化,無線メッシュネットワーク用可視化システムの設計と実装および性能評価を行う. ネットワーク上のノードやリンク情報の可視化手法の考案と実装は,研究協力者の大学院生が行う.この可視化システムの利用者として無線P2Pネットワークでのプロトコル開発者や応用システムの開発者およびネットワーク管理者を想定している.これらの利用者に有益となる情報を提供することが重要となる.本研究では,提供する情報としてノードのバッテリー残量やCPU負荷およびリンクの負荷やリンク強度(無線電波の強弱)を考えているがそれ以外にも利用者に有益な情報を提供していきたいと考えている. 上述したノードやリンク情報の可視化手法の考案と並行して,研究代表者がAPIの設計と実装を行う.開発した可視化システムを応用プログラムやルーティングプロトコルなどの各種プロトコルから利用するためには,利用しやすいAPIを提供する必要がある.APIとは,応用プログラムを開発するときに利用できる命令や関数の集合である.ここでは応用プログラムや各種プロトコルを想定しそこで必要となる可能性のある関数を数多く提供できるようにAPIの設計と実装を行っていく. 平成25年10月から研究代表者が開発したAPIを利用して各種プロトコルの実装を行う.ここでは,ルーティングプロトコルの可視化などを行う計画である. さらに平成24年度および平成25年度に開発したシステムの性能評価を行う.性能評価の項目としては,ログの収集時間,ログ収集の正確性(収集成功率),ノードの描画位置の正確性などを定量的に評価する.また,3次元表示の見やすさやシステムの使いやすさなどのユーザビリティに関してユーザに評価してもらう.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の予算約26万円を平成25年度に繰り越した.これは,当初予定していた実験機材の購入や学会への参加を平成25年度に行うように変更したためである.理由としては,平成25年度に行う実機実験において当初予定していたよりも多くの機材を購入する必要が生じたことおよび平成25年度参加予定の国際学会の数が一つ増えたためである. なお,平成25年度の予算に関しては,当初の計画通りに使用する予定である.
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