研究課題/領域番号 |
24500079
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中村 匡秀 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (30324859)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | サービス競合 / スマートシティ / スマートセンサー情報システム / アルゴリズム / 省エネルギー |
研究概要 |
スマートシティは,地域やコミュニティにおける様々な社会インフラをICT技術によって統合することで,効率的で付加価値の高い都市を実現しようとする構想である.将来的にスマートシティ上に多くのサービスが展開されると,複数のサービスが互いに衝突・干渉し,意図しない不具合が発生するおそれがある.この問題は一般にサービス競合と呼ばれ,サービスの品質や安全性を低下させる要因として知られている. 本研究では,スマートシティにおけるサービス競合問題を形式的に捉え,サービス競合を検出・解消する体系的な枠組みを提案することを目的としている.具体的には3年の研究期間内に次の5つを達成することを目指す:(1) スマートシティおよびサービスのモデル化手法の検討,(2)スマートシティにおけるサービス競合問題の定式化,(3)サービス競合検出手法の開発,(4)サービス競合解消方式の開発,(5) サービス競合管理システムの開発と評価. 平成24年度は,上記(1)~(5)のうち,(1)および(2)に取り組み,様々なスマートシティ基盤やスマートシティサービスの研究・調査を行った.その結果,まずスマートシティの構成単位であるスマートハウスにおいて,センサによって駆動されるサービス同士が連鎖してサービス競合が発生する問題「サービス連鎖」を発見し,その現象のモデル化,検出手法を開発した.また,スマートシティ・ハウス内の様々なサービス同士が,環境への影響を通して競合する「環境競合」について,そのモデル化,定式化,検出手法を開発した.これらの成果は,2本のジャーナル論文にまとめて発表した. これらに加えて,スマートシティにおけるサービスで用いるデータを蓄積・活用するプラットフォームの設計や,電力消費や人の活動のログを可視化する手法など,本研究を契機として,スマートシティサービスに関する様々な研究を実施することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画当初は,(1) スマートシティおよびサービスのモデル化手法の検討,および,(2)スマートシティにおけるサービス競合問題の定式化の2項目の達成を目指して研究を行った.これらについては,手法の開発,評価,ジャーナル論文としての成果発表を含めて,当初の計画通り進めることが出来た. これらに加えて本年度は,スマートシティやスマートハウスに関する基盤やサービスに関する様々な派生的な成果を得ることが出来た.具体的には,以下のものが含まれる:(a) サービス競合を考慮したサービス開発のためのエンドユーザ支援,(b) スマートシティサービスのための大規模データ蓄積・活用基盤,(c) スマートシティサービスを実装するためのAPI設計,(d) ソフトウェアサービスフレームワークにおけるサービス競合の理解支援. したがって,当初の計画以上に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
(1) スマートシティにおけるサービス競合検出手法の開発 スマートシティにおけるサービス競合を自動的に検出する手法を開発する.まず,あるスマートシティサービス(Sとする)がそれ単体で満たすべき性質Prop(S)を提案モデル上で厳密に記述する.Prop(S)はモデル内の人の期待や満足度,環境に対する要件を用いた条件で記述される.Prop(S)の記述に当たっては,JML(Java Modeling Language)やECAルール(Event Condition Action)等を用いることを検討している.サービス競合は,単体では正常動作するサービスを複数組み合わせたときに発生する不具合である.したがって二つのサービスS1, S2の間のサービス競合を次のように定式化する:「S1がProp(S1)を満たし,かつ,S2がProp(S2)を満たす.このとき,両者を組み合わせたサービスモデルS1+S2が,Prop(S1)∧Prop(S2)を満たさなくなる」. (2) スマートシティにおけるサービス競合解消方式の開発 検出したサービス競合を解決するための競合解消方式を考案する.スマートシティにおいては,多くの人が各々の意図を持って様々なサービスを利用する.したがって,利用者の要求や利便性と,環境への影響とを最大限に考慮にいれ,柔軟な競合解消を行うことが鍵となる.比較的単純なサービス競合解消法としては,次のようなものが挙げられる:(ア)優先順位による解消:サービス間に優先順位をつけ,競合が発生した場合優先順位の高いサービスを優先する.ただし,任意のサービス間に妥当な順位をつけられる保証がない.(イ)利用者間のネゴシエーションによる解消:利用者間で折衝を行い,片方の利用者が互いに一部のサービス機能を妥協することで,競合の解消をはかる.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当無し
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