研究課題/領域番号 |
24500080
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
太田 能 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (10272254)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | センサネットワーク / 通信プロトコル / ネットワークコーディング |
研究概要 |
本研究の目的は、情報収集型無線センサネットワーク(WSNs: Wireless Sensor Networks)においてシステム寿命への影響を抑えつつ、耐故障性を向上し、情報収集率を高めることである。 情報収集型WSNs では、一般に、シンクに最も近いレベル1のノードの中継パケット数が他の上位レベルのノードに比べて多くなる。レベル1のノードのバッテリが完全に消耗すると、そのノードのみならず、そのノードが中継する必要がある上位レベルのノードのセンシングデータもシンクは受信できなくなる。一方、シンクから遠い上位レベルのノードは、中継パケット数が少ないため、システム寿命への影響はレベル1のノードに比べると少ない。 そこで本年度は、センシングデータの冗長パケットを迂回パスで送信することで耐故障性の向上を図る情報収集プロトコルST(Side Trip)方式と、さらにネットワークコーディング(NC: Network Coding)によりシステム寿命への影響を低減するSTNC(Side Trip with NC)方式を考案し、既存マルチパス方式とシミュレーションにより比較し、提案方式の有効性を確認した。 シミュレーション結果から、従来方式であるH-SPREAD(hybrid-secure protocol for reliable data delivery)およびSMRP(Sub-branch Multipath Routing Protocol)に比べ、STNC方式がシステム寿命への影響を抑えつつ、高いノード故障耐性をもつことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画では、サーベイをしながら、経路発見に工夫を加えることで、従来方法よりも、送信パケット数が 少ない方式の実現が可能になるのではないかと考え、検討を進めることを予定していた。また、簡易シミュレータに通信プロトコルを実装し、性能評価を行うことを予定していた。 本年度、経路構築に工夫をこらすことでマルチパス経路を空間的に分離する ST 方式ならびにネットワーク符号化技術を応用することで送信パケット量削減を狙った STNC 方式を考案した。また、簡易シミュレータによる評価により、提案方式の有効性を示すことができた。 これに加え、提案方式の実証実験に向け、外部発表には至っていないものの、実機実装への準備ならびに、簡易実験も行っている。 これらのことから、おおむね当初の計画どおりかそれ以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、建物による見通外通信の影響、フェージングの影響など、より現実的な状況を考慮できるネットワークシミュレータにより性能評価を行う。現時点では、商用シミュレータScenargieの利用を想定している。 また、最終年度は、実用化に向けた技術開発が目的であるので、実証実験による有効性の検証を行う。実証実験にあたっては、多数の端末を配置する必要があるので、設置が容易な小型Android端末を用いることを予定している。但し、Android端末は、アドホック通信をサポートしておらず、マルチホップ通信の実装例は少ない。OSのバージョンアップ等によりAndroid端末でマルチホップ通信を実現できない場合は、Linux OSをインストールしたノートPCを用いることにし、実証実験を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
現有する商用ネットワークシミュレータScenargieのライセンスに加え、性能評価を効率よく行うためにライセンスを1本追加購入(ベースシミュレータと電波伝搬モジュール)する。さらに、開発用計算機、シミュレーション実行用のサーバを導入する。 その他、平成24年度の投稿した国際会議参加のための外国旅費を計上している。 また、論文別刷代、ならびに研究会、総合大会での発表と情報収集のための国内旅費に研究費を充当する予定である。
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