研究課題/領域番号 |
24500083
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
近堂 徹 広島大学, 情報メディア教育研究センター, 准教授 (90437575)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マイグレーション / 移動透過通信 / ストリーミング |
研究概要 |
本研究では、任意のアプリケーションを複数デバイス間でシームレスに移動することを可能にするアプリケーションポータビリティを実現する。平成24年度は、これまで提案してきた、仮想計算機の移動(グローバルライブマイグレーション)に対してより柔軟性を向上させたグローバルライブマイグレーションを実現するために、仮想計算機上のOSの改変を必要せずネットワーク側で移動透過性を保証する新たなグローバルライブマイグレーション手法について基本設計を行った。ネットワーク側で移動透過通信機能を提供するために、必要なマッピング情報を移動前後のハイパーバイザで共有可能なモバイルルータ(vMR: Virtual Mobile Router)を仮想アプライアンスとして実現する。そのために、NAT66やNAPT-PTなどのトランスレーション機構の検証を行うとともにアドレス変換処理に関する実装を進めている。これに加え、複数のvMR間でのマッピング情報共有の実現手法について検討を行っている。 また平行して実験環境の整備も行い、研究室内での検証環境だけでなく、SINET4およびJGN-Xを利用して広島大学、金沢大学、国立情報学研究所を結んだ地理的に広域分散プラットフォームの構築を進めた。本検証環境は、マルチサイトで統一的なアクセスが可能な広域分散ストレージをベースにしたプラットフォームである。本研究で提案するグローバルライブマイグレーションは仮想計算機のディスクイメージの共有方法が大きな問題となるが、本プラットフォームはこれを解決するひとつの方法となる。次年度以降、この広域分散プラットフォームの一部を本研究の実証実験で利用する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度においては、ネットワーク側で移動透過性を保証するグローバルライブマイグレーションの設計についてはおおむね完了し 、設計方針に基づく実装を進めている。 マイグレーションプラットフォームを構成するハイパーバイザとしてKVM(Kernel-based Virtual Machine)+QEMU環境を準備し、この環境上に移動透過機能を提供する仮想アプライアンスとして、CentOSによるvMRの実装を進めている。なお、今後実装の状況によってはOSの変更等も発生する可能性もあるが、本研究の遂行にあたり大きな影響はないと考えている。 仮想アプライアンス内にはNAPT-PTをベースにしたアドレス変換機能と複数台で連携してマッピングテーブルを共有するための機構を導入する必要があり、現在これらの実装を行っている。本来であれば平成24年度中に性能評価を行うことを予定していたが、実装が完了した後に直ちに実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては以下の通りである。 ・現在進めている移動透過機能の仮想アプライアンス実装と性能評価を進める。評価内容としては,仮想マシンのメモリサイズや内部動作状況(メモリ操作の頻度),マイグレーション前後のコンピュータが接続されているネットワーク帯域や遅延をパラメータとした時のマイグレーションにおける通信途絶時間やVMへの影響を計測する。 ・デバイス間アプリケーションポータビリティを実現するためのデスクトップストリーミング手法について検討し、アプリケーションポータビリティの設計と実装を進める。 ・平成24年度に構築した実験環境をさらに拡充させ、この実験環境を利用してグローバルライブマイグレーションの評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、実験環境の更なる拡充を目的とした実験設備を整えるために、コンピュータを購入する。さらに、アプリケーションポータビリティの実装を進めるために、エンドデバイスとしてノートパソコンやタブレット端末の購入を検討している。加えて、国内外の研究会等での情報収集および成果発表のための旅費も計上する。
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