研究課題/領域番号 |
24500086
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
瀬川 典久 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 講師 (20305311)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | センサネットワーク / 野外 / 狭帯域スペクトラム拡散通信 |
研究概要 |
本研究の目的は、zigbeeの様な短距離をマルチホップする手法ではなく、スペクトラム拡散通信を利用し、低電力で10km以上の長距離通信を行うセンサネットワークを構築する。具体的には、DSP内蔵マイコン(ARM Cortex-M4F)を活用し、スペクトラム解析が可能なセンサノードを構築し、広域での送受信が可能なセンサネットワークを構築する。また、本システムを利用し長距離のセンサネットワークの構築を行い、野外の動物の生態、自然災害を検知するセンサノードを構築し、本手法の有効性を確認する。 (1)は、Cortex-M4F等の組込機器でmad-ssの動作を実現させ、送受信可能なセンサノードの構築を行う事である。まず、8月まで、Cortex-M4Fでの1024tipでのFFTの実現を目指した。これは、従来のDSPが、4k point程度のFFTしかサポートされていないため、独自実装が必要だからである。結果実装は可能であったが、Cortex-M4Fの内蔵メモリでの動作が非常に厳しいことがわかった。そこで、メモリ容量が大きい(ただし、消費電力が10倍程度)のARM 11系の組込機器での実験を行った。結果、ARM11を搭載したRaspberry Piで十分にMAD-SSのデコードを行う事が出来る性能が十分にある事が確認できた。この結果から、組込機器でのmad-ssの送受信ノードの実装の目処がたった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ARM11を搭載したRaspberry Piで十分にMAD-SSのデコードを行う事が出来る性能が十分にある事が確認できた。また、Raspberry Piの消費電力は、3.5W程度であることが公式に発表されているが実際に消費電力の計測を行った所2.5W程度で動いている事が確認出来た。従来PCで6W~8Wかかっていた消費電力を3.5W程度に抑える事が出来たため、MAD-SSの小型化・低消費電力に成功したといえる。 また、CPUの能力的にはARM7のCortexM4Fでも十分に動く事が確認出来たため、チップ長を落とす等、メモリ容量を減らす工夫等を行えば、既存のセンサノードレベルの低消費電力で長距離通信を実現出来るようになると考えられる。 25年度以降、実際の組込機器(予定では、Androidスマートフォン)に搭載し、実験を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、3年で行い、平成24年度に、スペクトラム拡散通信手法の一つである高速同期法を用いたスペクトラム拡散通信を利用したセンサネットワークの構築を行う。平成25年度には、DSP内蔵の低消費電力マイコンでの実装を完成させ屋外での実験を行う。平成26年度には、さまざまな野外で利用するセンサノードを制作し、実際に運用することで評価を行う。 研究計画の一部変更を以下に示す。Cortex-M4Fでの実装の前に、ARM11系でのAndroid携帯&Arduinoでの実装を行う。これは、Cortex-M4Fの内蔵メモリの容量の問題があるからである。RAM高容量版のCortex-M4Fの各メーカの実装が、予定より遅れており、mad-ssを実装するための内部メモリが確保出来ないからである。また、Cortex-M4Fの外部メモリアクセスが、予想より遅いために、外部メモリを増設して実装が困難であるからである。 そこで、実装サイズが大きくなる欠点があるが、ARM11(Cortex-A)を搭載したAndroid携帯をホストにし、外部電源をつけることで実装を行う。Android端末を用いる理由は、ベースOSがLinuxのために、従来のコードの移植性が高い事と、近年急速に発達したために、さまざまな周辺機器が容易に利用可能なことである。 今年度は、Android携帯の実装を完全に完了させ、その後RAM高容量版のCortex-M4Fが出荷され次第、Cortex-M4Fでの実装に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)物品費は、従来汎用のアマチュア無線送受信機を用いていたが、今年度は専用の受信機を、外部委託で開発を行い、それを用いる。また、複数のAndroid端末を購入し、その端末にmad-ssを移植し、送受信を可能にする。 (2)旅費は、外部発表(国際会議)および野外実験に用いる。特に、今年度からは、山梨大学の美濃先生のプロジェクト(気球を用いた成層圏ー地上通信)に参加し、mad-ssの新たな利用方法を追求する。 (3)謝金は、mad-ssの実装(外装実装など)および野外実験の補助に支払う。 (4)その他は、携帯電話のパケット代(リモートで運用している、受信管理システム)および学会参加費に充当する。
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