昨年度で苦戦した、小型マイコンによるスペクトラム拡散通信の受信に成功した。具体的な研究実績は、以下の通りである。 1.ARMおよびIntel Edison(Intel Atom)でのスペクトラム拡散通信システムの実装: 今年1年でのコードの改良により、実時間でのスペクトラム拡散通信での受信が可能になった。 2.Audioのデバイスドライバの改良によるオーバヘッドの改善:これは、OS側の対応になるが、組込マイコンにおけるオーディオの取り扱いが改良され、処理速度の向上に寄与するようになった。特に、ARMマイコンにおけるI2Sのデバイスドライバの改善は、本システムの安定動作に非常に貢献することが分かった。 3.専用の受信回路の作成:本研究で利用するMAD-SS受信システムは、140MHz帯において、周波数偏差を1.4ppm以内にする必要がある。市販受信機において、1ppm以下で低消費電力で動作する物はないために、専用で受信機の開発を行った。 4.小型マイコンの性能向上と消費電力の低下:小型マイコンの性能向上および低消費電力化により、当初の申請書より性能のよい小型組込マイコンを利用する事が可能になった。そのために、Cortex-M4Fで実装するための特殊OSではなく、Linuxでの実装が可能になり、さまざまな周辺機能を持たせることが可能になった。 5.成層圏気球に搭載することによる長距離中継通信の確立:本システムの評価を行うために、成層圏気球に送受信機を設置し、山梨県上空で実験を行った。山梨県で送信したデータが、成層圏気球での中継により栃木県足利市まで到達したことを確認した。
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