研究課題
■2013年度に実装した集約Skip Graph及びBFSG(分散環境で全文検索を行うための構造化P2Pネットワーク)は,いずれも(以前に研究代表者が実装した)SkipGraphをベースとしている.しかし,Skip Graphは複雑で,新しい機能を追加しつつバグの少ない安定な実装を得ることは難しいことが理解された.このため,新たにChord#をベースとした新しい構造化P2PネットワークSuzaku(仮称)を実装した.Suzakuでは,(1)finger tableを双方向化,(2)対数の底を選択可能,(3)ネットワーク距離を考慮したルーティングが可能,といった特徴を備える.さらに,その上でノード故障を考慮した高速な範囲検索アルゴリズムを考案し,実装した.SuzakuはP2P基盤ソフトウェアPIAXの一部として実装している.■構造化P2Pネットワークの基盤として使用している,DDLLアルゴリズムについて英語論文を執筆した(投稿予定).■DTN部分を試作した.Bluetoothで通信するために,Javaインタフェースを提供するBluecoveライブラリを使用して実装を試みたが,Bluecoveは開発が停止しており,最近のOSではうまく動作しないことが判明したため,開発対象をAndroidに切り替えて実装した.BluetoothのDevice Discoveryによって相手を探索し,SPP(Serial Profile Profile)で通信する.DTNのアルゴリズムとしては,単純なEpidemicルーティングを実装した.
4: 遅れている
昨年度に引き続き,研究代表者が評議員兼研究副科長に任ぜられたため,研究に利用できる時間が不足しており,全体的に遅れている.■研究計画書に記載したP2P Twiterで実現する機能のほとんどについては,実現方式の検討は完了している.基礎となる構造化P2Pネットワークは,Skip Graphをベースとしたものを昨年度までに実装したが,今年度新たにChord#をベースとしたものを実装し直したため,完成が遅れている.■現実のインターネットに即した構造化P2Pネットワークの検討と実装については進捗が遅れている.上記の新しい構造化P2Pネットワークを実装するために時間が掛かったためである.■DTN部分は,Bluetoothで通信するものをAndroidデバイス上で試作し,動作は確認した.実用的なものとするためには,GUIの再検討,P2Pネットワークとの接続が必要である.
■本研究で実装する機能のうち,汎用性のある部分(集約Skip GraphやBFSG,Suzakuなど)については,PIAXに組み込んでオープンソースソフトウェアとすることで,他の人からのフィードバックを得られるようにしたい.オープンソース化することについては,所属大学の許諾は得ている.■引き続き,本研究の一部を学生の研究テーマとすることで研究を進めていく.
平成25年度に引き続き,平成26年度も研究代表者が評議員兼研究副科長に任ぜられ,研究科雑務に時間を割かれたため,研究のための時間をほとんど確保できなかった.
英文校正費,旅費,実験のための費用として使用する予定である.
以下の査読論文は,科研費からの直接的な支援は使用していないが,本研究への応用も念頭に置いて指導・執筆した.・呉承彦, 安倍広多, 石橋勇人, 松浦敏雄, P2Pネットワークにおける経路長あるいは経路表サイズの最大値を柔軟に設定可能な経路表構築方式の提案とその評価, 電子情報通信学会論文誌 B, Vol. J97-B, No. 10, pp. 849-860, (2014).