研究課題/領域番号 |
24500095
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
三次 仁 慶應義塾大学, 環境情報学部, 准教授 (40383921)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 電子タグ / センサー / 省電力 / 情報アーキテクチャ |
研究概要 |
移動する車で道路やトンネルなどの状況データを収集したり、スーパーマーケット等のバックヤードで、商品の賞味期限等を電子タグから高速で読み書きするために、resolver, subscriber, managerと呼ばれる新たなコンポーネントを有する情報システムアーキテクチャを、既存の国際標準(ISO,GS1)を大幅に変更することなく導出し、その効果を実験によって実証した。従来方法では、電子タグとリーダライタの間の無線通信の高速化やプロトコルの高度化によって高速化を計ろうというしていることに対して、提案手法では情報システムアーキテクチャとしてアプローチしている点が異なる。 resolverは電子タグのIDをキーにして、メモリデータスキーマをクラウド上で分散的に管理するサブシステム、subscriberは、複数のアプリケーションからのユーザデータ読み取り要求を集約するサブシステム、managerはメモリスキーマと、ユーザ読み取り要件に応じて、リーダライタの読み取り制御を行うサブシステムである。提案したアーキテクチャの有効性を示すために、まず現状技術によるユーザメモリアクセスの時間の構成を取得・分析する装置を作成し、商用リーダライタでは、一般的に電子タグのInventory(一斉呼び出し)に多くの時間を要していることを明らかにした。この結果を踏まえ、既存のプロトコルと提案手法による読み出し速度をある商用リーダライタで比較すると、ユーザメモリの読み出しを3.3倍高速化できることが明らかになった。また様々なユーザが一つの電子タグのユーザメモリの中のデータを断片的に取得する要求をmanagerが認識した場合は、自動的に読み取り領域を最適化する手法をmanagerに実装し、そうしなかった場合に比して2.5倍(読み取り領域が3つ)の高速化が可能であることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書では、センサデータ構造、無線プロトコル、データスキーマレゾルバの3つの研究の柱を立てた。平成24年度はセンサデータ構造に関しては、電子タグのIDを利活用した情報システムに関する検討を行い、IDを用いてデータスキーマを調べる仕組みを使うことによって、情報システムとして統合することができることを示した。無線プロトコルについては、商用のRFIDリーダのプロトコルを詳細に分析する装置を開発し、現状ではInventoryに多くの時間が費やされているため、データの誤り訂正よりも読み取り回数を減ずることが効果的であることを明らかにした。データスキーマレゾルバについては、当初想定していた電子タグIDによるスキーマレゾルバに加えて、データ購読領域の最適化を行う機能も加えた情報システムを考案し、ハードウェアを用いた実証実験を行い効果を定量化した。 IDを用いた情報システムアーキテクチャの全体像については、IEICE等の研究会・大会で発表し、すれちがい通信における高機能化・高速化についてはIEICE等の研究会で発表するとともに平成24年度の検討の集大成としてIEEE RFID 2013に投稿し採録された(採択率30%程度)。
|
今後の研究の推進方策 |
静的な状況での課題はおおむね理解できてきたので平成25年度からは、すれ違い状況における通信について重点的に検討を始める。すれ違い時のフェージングを実測するため工場内の搬送等に用いられる搬送ロボットを利用して、すれ違い実験を正確に、繰り返し実施できるように改造する。搬送ロボットについては昨年度に基本部分は購入してあるので、それを実際に動作できるように市販台車等に組み付ける。これと並行して、ソフトウェア無線によるUHF帯リーダライタの開発を進める。研究開始当初想定していたLyrtec社は会社の合併、国内販社の撤退など供給が安定しないため、Ettus社装置を用いて進める。今年度中にリーダライタにめどをつけて、実験局免許等を取得する。データスキーマレゾルバに関しては平成24年度に実装した、購読集約機能の性能評価を厳密に行うため集約による効果の理論値を確率論を用いて実装する。またこれまでの検討ではデータスキーマレゾルバーの接続条件が比較的よい条件(WiFi接続)であったが、実際には世界中に分散配置されているので、さまざまな接続条件が混在する可能性が高い。そこで、接続条件をダイアルアップ接続なども含めて多様にした場合の性能についても実証する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
物品費:平成24年度に開発したresolver, subscriber, managerを動作させるためのサーバーを購入する。現在所有するサーバーでまかなえる場合には、サーバーとネットワークを接続しているスイッチを購入する。ソフトウェア無線を実装・試験するためにストーレッジオシロスコープを購入する。 旅費:国内研究会・大会(5月IEICE ASN研究会、7月IEICE RCS研究会、9月IEICEソサイエティ大会)、および海外学会(9月 IEEE RFID-TA マレーシア)において研究成果の発表を行う。 その他:ソフトウェアリーダライタの電波免許申請を行う
|