研究課題/領域番号 |
24500095
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
三次 仁 慶應義塾大学, 環境情報学部, 准教授 (40383921)
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キーワード | 電子タグ / センサー / 省電力 / 情報アーキテクチャ |
研究概要 |
RFIDタグの中に蓄積したセンサー情報を効率的・確実に読み取る手法として、データを複数のRFIDタグに誤り訂正機能も付与して分散するバーチャルタグ方式を考案し、理論検討および実証によってその効果を確認した。バーチャルタグ方式では一つのRFIDタグに納めるデータを少なくし、さらに複数のRFIDタグに分散することで、読み取り誤りを少なくすることおよび、現実には回避することが難しいRFIDタグの読み漏らしを許容することができる。またセンサ情報を含むRFIDタグの応用エリアとして、サプライチェーンマネージメント(SCM)への適用についても検討を実施し、国際標準のデータ交換方式を用い、さまざまなプロダクトのSCMに適用可能なRFIDシステムプラットフォーム構築方法を考案し、実際に農業トレーサビリティシステムに適用した。この情報システムにおいては、RFIDの個体識別子と、農業トレーサビリティなどの上位のサービスで用いる識別子(在庫管理単位番号=SKU)を関係づける機能によって、プラットフォームの汎用性を高めている。さらに、複数RFIDタグのセンサー情報を同時に同期して取得する方法を考案し、実証によって、その有効性を確認した。複数のセンサー情報を同時に送信するために、サブキャリアの周波数的な繰り返し特性を利用し、逐次干渉除去をソフトウェア無線を用いて行う方式である。提案手法ではさらに、帯域幅を極限まで圧縮するために、センサーデータをアナログ変調で送付することも試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究していたセンサーデータの最適分割方式については、バーチャルタグ方式を考案し、実証によってその動作を確認した。おおむね計画した通りに進捗したが、分割方式の最適化や、誤り訂正符号の符号化率調整などにまだ改善の余地があると考えている。また自動搬送台車を用いた実験によってすれ違う際の読み取り時間の制約に問題があることを明らかにし、RFID方向検知をモノパルス方式によって実現するシステム構築に着手した。こうした予定していた研究内容および成果に加えて他プロジェクトからの要求から始まった農産物SCMへのセンサーRFIDシステムの適用、センサーRFIDデータの同期した高速取得についても、それぞれ特徴的な技術を開発できた。センサーRFIDシステムの農産物SCMへの応用についてはIEEE RFID-TA2013で発表した。また本研究を構成する個別技術については、日中韓で共同して開催するAuto-IDラボ CJKワークショップにて発表を行った。センサーRFIDデータの同期した取得についてはIEEE RFID 2014に発表が確定し、さらに全体で3件だけ選択されたBest Paper候補となった。
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今後の研究の推進方策 |
バーチャルタグ方式においてデータ分割と、複数のRFIDタグを用いることによる読み取り漏れを同時に解決する方式について検討を進める。またすれ違い通信における通信を安定化させるために、RFIDタグ到来方向検知方式をSDR(ソフトウェア無線)を用いたモノパルス方式で実現する方式についてアンテナ指向方向制御によるデータ読み取りに与える効果を定量化するとともに、詳細な精度評価や誤差分析を行う。センサーRFIDシステムの応用例として無線を用いた建物等の故障診断を取り上げ、センサー(加速度センサーを主として用いる)RFIDタグからの同時情報取得による故障や加振ポイントの特定について検討を進める。
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