研究課題/領域番号 |
24500096
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
森野 博章 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (50338654)
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キーワード | 無線メッシュ / マルチキャスト / PIM-SM / レイヤ2マルチキャスト / IGMPスヌーピング / 媒介中心性 / 移動端末 |
研究概要 |
無線メッシュにおいて,イベント時のリアルタイム映像配信を想定し送信端末が移動しながら行うマルチキャストを効率よくサポートするルーチングを考案した.既存方式として一般的なPIM-SMを利用する場合はすべてのAPがマルチキャストルータの機能を有する必要があり,通常の無線メッシュと比較し機器コストが大幅に増加する. 新たに考案した方式は網をN個のサブネットに分割し,サブネット内ではIGMPスヌーピングを利用したレイヤ2マルチキャストを,サブネット間ではPIM-SMによるレイヤ3マルチキャストを行う方式(以下,ハイブリッド方式)である.この手法ではマルチキャストルータの機能を持つAP(以下,マルチキャストルータAP)の数はサブネット毎に1台のみで良いため機器コストを抑えられる点に特徴がある. ハイブリッド方式では各サブネット内に置くマルチキャストルータAPの配置によっては従来の PIM-SM SPTと比較し経路のホップ数が大きく増加する可能性があるため,この問題を軽減するAP配置手法の検討を行った.シミュレーションによる評価の結果,網の各APについて媒介中心性指標と呼ばれる値を計算し,サブネット内で網の中心に最も近い位置にあるAP一台をマルチキャストルータAPとする手法(以下,中心性方式)が最も良い特性を示し,PIM-SM SPT方式と比較し経路の平均ホップ数が10%増加することを許容すればマルチキャストルータAPの数を約1/4に低減できることが明らかとなった. ハイブリッド方式では,マルチキャストルータAPで必ず経路を分岐させる必要があることからこのAP付近のリンクで経路が重複しデータの最大配信速度が低下する問題も生じうるが,中心性方式は他のAP配置法と比較し最大配信速度の低下を最も抑えられることができ,PIM-SM SPTに対する最大配信速度の低下は約20%に抑えられることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では平成25年度は提案システムを有線VLAN網に実装し基本機能の検証を行うこととなっていたが,24年度での検討の結果,提案方式はマルチキャストツリーの構成法,特にサブネットの分割方法に関する理論的な側面で検討すべき事項が多く,実装と比較しこちらのテーマ検討の方が学術的価値が高いと判断したため,詳細な特性をシミュレーションにより評価する方針に変更した.結果として有益な成果が得られ,昨年12月に国際会議で発表を行ったところBest Paper Awardを頂くこととなった.現在,24年度の成果とこちらを合わせる形で論文にまとめ投稿に向け準備を行っている.当初は論文執筆を26年度後半に予定していたことから,26年度と25年度の計画が入れ替わる形となっており実装は今年度行うこととなる.全体としてはおおむね計画通りに進んでいると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は当初の計画通り,提案するハイブリッド方式をVLANスイッチ上に実装し機能検証を行う.AP間のリンクは指向性アンテナにより,AP と端末の間のリンクは無指向アンテナで構成する.このシステムで,送信端末を歩行速度程度で移動させ,無線でのハンドオフを行わせて,実装したAP 間の経路制御方式が無線環境でも正しく動作することを確認する.
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次年度の研究費の使用計画 |
進捗状況の欄でご報告したとおり,25年度は当初はプロトタイプ実装を予定しており機器購入のため予算を多めに割り当てたが,実際には計画を変更してシミュレーションによる詳細特性評価検討を行い機器を購入しなかったため予算執行額が減少した. 当初予定のプロトタイプ実装は今年度行うため,次年度使用額はプロトタイプ構築に必要となる無線LANアクセスポイント・VLANスイッチ等の購入,実験時のAPの固定に必要となる各種治具の購入などに使用する.
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