動画像号化法のひとつに,対象を階層的に符号化する「階層符号化法(スケーラブル符号化法)」があり,従来から”動きの滑らかさ”および”各単一フレームの画質”を各々階層符号化する手法が実現されているが,両者をバランス良く制御し,ビットレート制限下で復号画質を最大化する研究はされていない.本研究では,申請者が過去に研究・確立してきた「主観画質を最大化するレート制御法」を応用し,階層符号化の最適レート制御法を確立すると共に,その有効性の検証を目標とした. 具体的には,3年間の研究期間において,(1) 階層符号化器の特性および過去の研究による知見を基に,階層符号化における主観画質(MOS)を予測する手法の確立,(2) (1)の結果を用いて各階層で時間-画質スケーラビリティを最適に制御する時空間レート制御法の確立とH.264/SVC符号化器への実装,(3) 研究代表者が過去に提案している「ビットレートの最適割り当てに基づく画質平坦化法」の階層符号化への適用,および(4) 以上に基づいて実現した提案手法の優位性・有効性の検証,の各項目の実現を目的とした.平成26年度は(3),(4)の項目について検討・実現を行ない,平成24,25年度の研究結果と併せ,上記(1)~(4)の項目を当初目標の通りにほぼ達成した. 以上により,対象動画像のシーンを単位に,各階層で主観評価値(MOS)を最大化するレート制御法および符号化法,また可変ビットレート下で定画質符号化を実現する手法が確立された.
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