研究課題/領域番号 |
24500115
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
川波 弘道 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (80335489)
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研究分担者 |
鹿野 清宏 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 教授 (00263426) [辞退]
猿渡 洋 東京大学, 情報理工学系研究科, 教授 (30324974)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 音声対話システム |
研究実績の概要 |
話し言葉を使ってユーザに情報を提供する情報案内システムは、システムの利用にあたってユーザ側の負担が小さい情報提供システムとして期待されており、現在ではモバイル端末を介した雑談対話システムも実用化されている。本研究は情報提供とともに日曜的なあいさつや雑談的なやりとりを行うことができる音声情報案内システムの応答性能向上を、ユーザ発話からの自律的学習により実現する手法を研究するものである。ここで応答生成に用いている手法は、事前に準備した質問用例の中からユーザ発話の認識結果と類似したものを検索してそれに対応付けられた応答を出力するという、用例ベースのアプローチである。 これまで、類似用例をより高精度に検索するために前段にトピック分類処理を導入することを提案し、文章に含まれる単語のベクトル(Bag-of-Words, BOW)を特徴量とし、機械学習(SVM(Support Vector Machine)、pboost)による質問カテゴリ識別の有効性を示した。また10年間にわたる運用で得られたユーザ発話のうち、ラベルやタグを付与していないデータを用いて識別モデルを改良する、半教師学習によるトピック分類の実験も行った。H26年度の段階で教師なしデータを用いた場合の有意なトピック分類性能改善には至っていないが、異なる特徴量、分類手法の観点からの豊富なユーザデータを利用した実験が可能である。 またH26年度は、ユーザにとって応答性能の改善は提供する情報のみでなく、システムがユーザの声をきちんと聴いていることを伝えることが有効であるという考えから、対話中に相槌やユーザ発話の反復を行うシステムも開発した。また、インタフェイスとして従来のCGエージェントでなく、身体性を持ち動作を伴うロボットを用いたシステムの開発も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案手法のうち機械学習によるトピック分類の有効性についてはすでに示すことができた。それとは異なる挑戦的なアプローチとして、機械翻訳技術を用いた応答生成手法を提案したがこの手法の評価には質問の表現の多様性に対応した多様な応答文を大量に整備する必要があった。本研究で遂行できる範囲を超えると判断し、得られた知見を本課題での成果とした。実システムを用いた実証実験は従来システムのトラブルによる置き換えで時間を要したため、H27年度に研究期間を延長して実行することとなったが総合的にみて、期間内に想定した研究範囲をおおむね達成できている。 また想定した範囲に加え、研究遂行の過程で提案手法を応用して不要発話識別に用いることの有効性、ロボットインタフェイスと相槌・反復を導入したシステム開発を行うことができた。そのためおおむね順調に進展していると自己評価するものである。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となるH27年度は、H26年度までに予定していて達成できなかった点を補充する。つまり、提案手法を組み込んだ音声情報案内システムの実証実験が中心となる。最新のPCプラットフォームで一般ユーザがストレスなく利用できる頑健なシステム開発を行い、ユーザ発話を収集、手法の評価と誤応答の分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度後半、実環境運用している音声情報案内システムに研究成果である技術を導入し、応答性能評価実験を行う予定であったが、運用していたシステムに機械的トラブルが発生し、長期間の実験が困難になった。 そこで研究期間をH27年度まで延長申請を行い、H26年中に予定していた評価実験、成果発表はH27年度に行うこととした。それに伴い、H26年予算のそれに対応する予算をH27年度に執行することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
実験用パソコン2台、国内発表のための旅費2件に使用する。
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