研究課題
基盤研究(C)
近年,書籍の電子化が進み,ユーザはWeb上で書籍を探し,読むことができるようになった.電子書籍の増加にしたがって,読みたい書籍を見つけることが困難になり,書籍の選別を支援するシステムが重要になってきている.Web上において,ユーザが読みたい書籍を発見するタスクは,「候補を絞り込む段階」と「候補の価値を判別する段階」の二つの段階に大別できる.ユーザは,Web上に存在する全ての書籍に目を通すことは困難であるため,まずはキーワードによる検索や推薦によって,候補を絞る作業を行う.これまで,読む書籍の候補を絞り込むことを目的とした検索や推薦に関する研究が活発に行われてきた.しかし,一般的に,提示された候補の書籍を読む価値のある書籍と,即座に断定するのではなく,何らかの方法で価値を判断し,選別を行う.我々は,有効な選別方法の一つに,実際に書籍の本文を読む「立ち読み」があると考えた.これまでにも,制限されたページ数内で,ユーザの選別に有益な文章を優先的に提示する手法が利用されている.しかし,電子書籍における大きなジャンルの一つである小説に対しては,科学技術論文や専門書を対象とした文書検索機構や,閲覧支援機構が不適切である場合が多い.これは,未読小説の選別をする場合,小説本文に含まれる単語が未知であるために,ユーザは興味のあるキーワードの想起が困難であることが原因である.以上の背景より,我々は書籍の中でも小説に対象を限定し,「立ち読み」の支援を行うインタフェースを開発し,有効性を評価することを研究の目的とする.本年度は,未読小説の選別においては,興味を優先的に「立ち読み」することが重要であるという考えに基づいて,物語の進行に伴うユーザの興味をひく度合いの変化を可視化した「興味喚起度マップマップ」を動的に生成する手法を開発した.
2: おおむね順調に進展している
本年度は,電子書籍小説の興味喚起度マップの自動生成手法を開発した.興味喚起度マップを生成するためには,最初に,小説本文に出現する単語の興味喚起度を,Web上に存在する小説のレビューを使って決定することとした.これは,具体的には,対象とする小説のレビューに出現する頻度が高く,他の小説のレビューの出現頻出が低い単語に高い興味喚起度を与える.次に,小説の流れに従った興味喚起度の推移を可視化する.これにより,ユーザは興味を喚起する文章に出会う可能性が高い箇所を知ることができる.しかし,小説の流れに沿った興味喚起度の推移だけではそこにどのような内容が書かれているのかが解らない.そこで,それぞれの層のピーク箇所に特徴的なキーワードを決定し,配置する.上記の手法に基づいて,興味喚起度マップを作成し,被験者による予備実験により有効性を評価したところ,おおむね良好な結果が得られた.したがって,本研究は,当初の予定通り順調に進展している.
今後の研究を進めるにあたり,まず,今年度開発した,興味喚起度マップにを利用した電子書籍小説の立ち読みインタフェースを設計する.そして,設計したインタフェースのプロトタイプシステムを実装する.次に,提案手法の評価手法を開発し,開発した評価手法に基づいてプロトタイプシステムを利用した被験者実験により,提案インタフェースの有効性を評価する.
プロトタイプシステムを実装するためのパーソナルコンピュータを購入する.さらに,これまでの研究成果を,国内研究会,国際会議,学術雑誌によって発表する.
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (11件) 図書 (1件)
International Journal of Knowledge and Web Intelligence
巻: 3 ページ: 58 - 69
10.1504/IJKWI.2012.048164
Frontiers in Artificial Intelligence and Applications
巻: 243 ページ: 1061 - 1070
10.3233/978-1-61499-105-2-1061