研究課題/領域番号 |
24500132
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研究機関 | 静岡理工科大学 |
研究代表者 |
工藤 司 静岡理工科大学, 総合情報学部, 教授 (90583782)
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キーワード | 情報システム / データベース(DBMS) / 並列処理・分散処理 |
研究概要 |
本研究は,オンライン入力と同時実行可能な,トランザクションとしての一括更新機能の提供を目的としており,今年度は2年目の研究であった.1年目の研究の結果,本方式はオンライン入力との同時実行だけでなく,分散型データベース環境において効率的であることが分かってきた.そこで,支店毎に在庫を管理する在庫管理業務を対象として,本方式を分散データベース環境に適用したプロトタイプを構築,評価した.この結果,従来のミニバッチによる方式に比較して短時間での一括更新を実行できることを確認し,成果を国際会議(主催:KES International)で「A Mass Data Update Method in Distributed Systems 」の表題で発表した. ただし,分散データベース環境では更新遅延などが発生する場合があり,一括更新の遅延がオンライン入力に影響するという課題が発生した.このため,この影響を抑止する方式を提案し,実装して有効性を確認した.具体的には,当初,一括更新の終了時刻を指定していた方式を改良し,更新の終了を待って即時に一括更新のコミットを行う方式とした.また,一括更新の完了時点でオンライン入力中のデータはマスクして検索できないようにし,オンライン入力の結果と統合して検索することで遅延発生の際にも他のデータへの影響を抑止できるようにした.成果は国際会議(主催:Informatics Society)で「Application of a Lump-sum Update Method to Distributed Database」の表題で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25~26年度の研究目標としては,24年度の成果に基づき「具体的な業務システムのプロトタイプ構築により、実際の業務システムに適用した場合の更新方式の有効性や効率を評価する」ことにしていた。 これに対して「研究実績の概要」欄に記載した通り,分散型の在庫管理システムを対象としてプロトタイプを構築し,本方式を適用した場合の有効性や効率を評価し,集中型データベース環境だけではなく分散型データベース環境においても有効であることを確認できた.また,この成果を2件の国際会議で発表することができた.さらに,研究者の自由な情報交換を目的とした国際会議(主催:Informatics Society)で「A Study of Long Time Transaction」の表題で発表し,ディスカッションを行った.これを通じて,トランザクションの同時実行制御のための基盤である直列化可能性と障害回復の点で理論的な裏付けが必要であることを把握できた.本件は,26年度の研究に織り込む予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は本研究の成果をまとめる年であるため,これまでの成果を踏まえて体系的な方法論として整理することを狙っている.特に,「現在までの達成度」欄に記載した通り,一括更新をトランザクションとしてオンライン入力と同時実行制御する上で不足する機能を補足し,業務システムのプロトタイプによる評価を行うことを目標とする. このため,まず,トランザクションの概念の点から直列化可能性,障害回復のための制御機能の抽出を行う.次に,業務システムを前提としたプロトタイプを構築し,これらの制御機能により正常処理,トランザクション障害発生時の両方のケースにおいて,トランザクションのACID特性と直列可能性が維持できることを検証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は,外注する予定であったプロトタイプ・システム開発を研究室内で実施した.一方で,国際会議での発表は予定通り行ったものの,各種調査や国内発表をこの作業のために見送っている, 上記外注費の一部を次年度に国内発表を行うための費用として繰越し,今年度予定だった業務を行う.
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