研究課題/領域番号 |
24500142
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
藤波 香織 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10409633)
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キーワード | 空間的拡張現実感 / 安全教育システム / 化学実験 / プロジェクタ・カメラシステム |
研究概要 |
H25年度は,1)プロジェクタ・カメラシステムにおける投影補正を用いた物体認識,2)物体の形状やサイズを考慮した卓上情報投影の視認性向上,3)微少物体のIDと場所特定法の改良,4)アプリケーションケーススタディ,を行った. 1)では,情報の物体上への投影により,情報の視認性が低下することと,投影光の影響により物体認識の精度が低下するという2つの問題が存在することがこれまでの取り組みで判明していた.そこで,物体認識に理想的な白色光が投影された投影面の状態を「非投影状態」と定義し,プロジェクタの投影中に非投影状態を推定する手法を開発した.プロジェクタ光の色補正が行われている状態で非投影状態の推定精度について評価を行い,色補正時の投影面の輝度が十分に明るい条件において,非投影状態が推定できることを確認した.このため,任意の投影において視認性の低下を防止し,投影面の色の推定により物体認識精度を向上するシステムが実現できる可能性を得た. 2)では,前年度開発したUGD法をさらに改良して,移動した物体に対するラベル投影のための計算とラベル移動を局所化した.また,物体の影領域を計算する際に利用する物体モデルに関して,円柱に加えて直方体を導入することで,高密度に物体が配置されているときのラベル投影箇所の計算が不安定になる問題を解決した.また,提案手法を実験し延期版システムに統合して学園祭でデモを行った. 3)では,奥行き方向の精度向上のために,前年度までの単眼カメラではなく,深度センサを用いることを検討した.また,手首にカメラを装着することによる利用性の低下を防ぐために,深度センサから得られる立体情報を利用した物体認識手法の基礎検討を実施した. 4)では,手順が存在する作業として,アイロン掛けを取り上げ,本研究で提案しているプロジェクタ・カメラシステム構成を用いた支援システムを開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,中等教育から高等教育前期程度の学習者による実験作業時の危険回避能力の強化を目的としたスマート実験室を対象としている.そこでは,既存の実験室への導入の用意さを意識したシステム構成法を明らかにすることを目指しているが,「1.プロジェクタ・カメラシステムにおける投影補正を用いた物体認識」,「2.物体の形状やサイズを考慮した卓上情報投影の視認性向上」や「3.微少物体のIDと場所特定法の改良」は,いずれも既存の化学実験室の制約を反映し,容易な導入を可能とする方法として,目的達成につながっていると考えている.いずれも年度当初に計画したものであり,順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
H26年度は研究の最終年度であり,過去2年間で開発してきた要素技術を洗練したうえで,基盤システムに統合して実際の化学実験の場で利用評価を行う.特に,物体の形状やサイズを考慮した卓上情報投影の視認性向上機構において,現状では手入力している物体のモデル情報を深度カメラからの情報を用いて自動的かつ高速に獲得する手法を開発する.また,微少物体のIDと場所特定手法に関しては,その性能がより上位の「作業」の認識に十分であるか否かを評価し,必要であれば改良を行う.なお,化学の専門知識や実験教育方法は連携研究者(レンゴロ)の協力を仰ぎつつ進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
国際会議と国際論文誌への投稿とそれに伴う英文校正をさらに1件ずつ予定していたが,適切な場がなかったためこれを見送ったため. 成果の対外発表として,国際会議2件と論文誌2篇,国内学会4件を予定しており,これらの英文校正費・出張費・参加費を計上する.また,実験で使用するシステム開発および実験補助のために学生アルバイト謝金を計上する.
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