研究課題/領域番号 |
24500143
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
由井薗 隆也 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 准教授 (70315399)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | グループウェア / 電子会議 / KJ法 / ブレインストーミング / 集合知 / 発散的思考 / 収束的思考 |
研究概要 |
本研究では,問題解決会議の基礎公式として,「グループの力」は「意見の多様度」(多くの多様な意見が出されているか)と「意見の集約度」(多くの意見をうまく会議の結果に反映できるか)の積と定めている.初年度は,創造型会議のプロセスと集合知の4条件を用いたフレームワークの見直しと分散性の効果に関する基礎データの収集実験を行った. 分散協調型KJ法と集合知の4条件との関係を整理を通して,問題解決会議の基礎公式との対応を明らかにした.分散協調型KJ法のグループ作業を,心理学者ギルフォードの人間知性モデルの操作部分との対応について述べる.発散的思考は意見入力段階,収束的思考は島作成段階,評価は文章作成段階に相当する.一方,Srowikiによる集合知の4条件は多様性,独立性,分散性,集約性である.これを分散協調型KJ法と関連づけると多様性,独立性,分散性は意見入力段階に対応し,グループによる発散的思考と対応する.そして,集約性のみが収束的思考に対応する.このフレームワーク作りよりわかることは,集合知についての知見は発散的思考に多くあてはまるが,それらをもとに,いかに収束的思考をグループで行うかは知見が少ないことである. 我々の先行研究において取り扱えていなかった分散性の効果を調べた.そのために携帯端末であるiTouchで使えるWebアプリケーションを開発し,学内全域をフィールドワークとする実験を行った.分散環境の実験結果を固定環境のものと比較した.その結果,分散環境では,メッセージ数が少ないが,アイデア数やアイデアの種類は差が無いだけでなく,アイデアの多様性が高いことがわかった.また,アイデアを出す作業に,周囲の影響があり,アイデアの種類に繋がる可能性がわかった.以上より,分散性の性質を支援する機能が発散的思考の支援に影響を及ぼす事を研究室実験において観察した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,提案する問題解決会議の基礎公式について集合知の4条件および問題解決会議対象とする分散協調型KJ法のプロセスとの関係を明らかにした.当初,計画した問題解決会議プロセスの枠組みだけでなく,集合知の4条件との関係を把握できた. また,過去の集合知型会議の実験において不完全な扱いであった集合知条件の分散性についての効果を調べる実験を行った. 以上より,ほぼ目的を達成したと判断した.
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今後の研究の推進方策 |
集合知会議のフレームワークと関連付けた電子会議の提案式(グループ知の力を求める式)を実際の会議データを用いて検証する. そのために,研究代表者が数十年に渡り蓄積してきた電子会議データに適用する.過去の実験データでは会議の出力データだけでなく,会議の操作ログをデータとして収集している.よって,誰がどの意見を出したか,どの意見を結論に向かって集約する作業を行ったかを追跡できる.一方,得られた実験結果に対しては評価値を新たに与える必要がある.その評価には,我々が開発した会議結果の評価方法を使用する. この評価値とグループ知の力との関係を調べることによって,人間による文章評価と理論式から求めたグループ知の力との整合性を調べることができ,提案式の妥当性を検証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
集合知会議の提案とその評価については論文発表まで行ったが,集合知会議のフレームワークと関連付けた電子会議の提案式(グループ知の力を求める式)は未発表である. これを情報処理学会グループウェアとネットワークサービス研究会で発表し,グループウェア関連の専門家と意見交換を行う計画である.これまでの一部,研究成果を国際会議で発表する予定である. 一方,過去の電子会議データの評価において価値観を含む部分は人手による評価を行い,その評価値を求める予定であり,そのために人件費を使用する.
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