研究課題/領域番号 |
24500143
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
由井薗 隆也 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 准教授 (70315399)
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キーワード | グループウェア / 電子会議 / KJ法 / ブレインストーミング / 集合知 / 発散的思考 / 収束的思考 |
研究概要 |
本研究では,問題解決会議におけるグループ知(参加者全員の知性)の大きさを量として表現する公式として,グループ知の大きさは,「意見の多様数」(多くの多様な意見が出されているかの量)と「意見の集約数」(多くの意見をうまく会議の結果に反映できているかの量)の積であると定めている. 本年度は,集合知を考慮した分散協調型KJ法の実験結果とこれら指標との関係を調べた.なお分散協調型KJ法はアイデアを出す意見入力段階,アイデアをグループ化する島作成段階,そして,それ以前の結果をもとに結論である文章を書く文章化段階の三段階からなる. 特に,自然言語処理を用いた単語の種類数を数えるプログラムを電子会議システムKUSANAGIに実装し,過去の実験データを処理する機能を加えた.その機能によって求めた「意見の多様数」,「意見の集約数」,「グループ知の大きさ」を実験結果の評価値である文章の総合満足度という尺度との相関を調べた.その結果,意見の集約量を示す指標が,文章の総合満足度と最も高い相関を取ることがわかった.また,集合知の効果として最も理解される傾向がある多様性は,低い相関となった. このことより問題解決会議をよくするためには,単に出される意見の量が多いことによる多様性だけでは不十分であり,選択された意見が結論である文章に反映される必要があることが定量的にわかった.今後,問題解決会議を支援する会議システムにおいて,グループ知をよくするためには,少なくとも「意見の集約数」を最大化することを支援すればよいという指針が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,提案する問題解決会議を評価する基礎公式を実際の会議データを用いて,その公式について検討することができた.その結果,当初考えた結果と異なり,多様性はよい会議を説明する指標とはならず,集約性がよい会議を説明する指標となるという結果を得た.これら指標は,本研究で発展させる電子会議システムに実装した自然言語処理機能を用いて得た値から得ている.よって,これら指標を電子会議システムで支援する技術的可能性も担保できたといえる. 以上より,ほぼ目的を達成したと判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,グループ知を活かすことができる電子会議システムのための会議理論を検討し,その理論を用いたシステムの実現を課題としている.これまでに,問題解決会議を評価する基礎公式を実会議データに当てはめることを通して,健全なグループ知の評価指標を示した.今後は,その評価指標を支援する機能を備えた電子会議システムを実現し,その有用性を評価することが必要となる. そのために次の二点を実施する. (1)既存の電子会議支援システムに評価指標の向上を促す支援機能を付ける.この際,既存の自然言語処理プログラムを電子会議システムに組み込むことができる. (2)この機能の有用性を調べるために,機能がある場合とない場合を比較するための実験を行う.特に,対象とする問題解決会議の結論作成部分に絞った評価を検討している. なお電子会議の結果部分を評価する方法をWebアプリケーションとして開発し,実験環境の効率化を諮る予定である.
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