研究課題/領域番号 |
24500148
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
西野 浩明 大分大学, 工学部, 教授 (00274738)
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研究分担者 |
吉田 和幸 大分大学, 学術情報拠点, 教授 (20174922)
賀川 経夫 大分大学, 工学部, 助教 (90253773)
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キーワード | ヒューマンインタフェース / 五感コミュニケーション / バーチャルリアリティ / 拡張現実 |
研究概要 |
平成25年度は,前年度に開発した要素技術に関して,その機能性および利便性の観点から実証的に評価・検証・改良を行うとともに,新たな応用分野を特定してシステムの設計・開発を行った。主な研究開発内容は以下のとおりである。 (1)要素技術の評価と改修:平成24年度に開発した要素技術を用いて,動画のシーンに対して感性語で特徴づけられる香りを同期提示することが可能な香りつき動画創作支援システム,実物の書籍を手にとって読むような感覚でデジタル文書の閲覧・編集処理が可能なAR(拡張現実)型文書処理システムを開発し,五感情報提示の機能性と処理性能,利便性に及ぼす影響,利用者の感性や個性に対応できる柔軟性の観点から評価実験と検証を行った。また,最終年度に向けての課題を明確化するとともに,機能の改良・拡張について検討を行った。 (2)新しい応用分野の特定とシステムの開発:評価実験を実施した(1)の2システムに加えて,五感データの活用に有効であると考えられる初心者向け3次元造形支援技術,および大規模計算機ネットワークの管理業務を想定した,専門家向け訓練・技能継承への応用に着目し,平成24年度に研究開発した要素技術を基盤に,システムの設計・開発を行った。初心者向け3次元造形支援システムに関する研究は,市民参加型ものづくり実験プロジェクト「ファブラボ大分」を管理運用しているハイパーネットワーク社会研究所(在大分市)と協力して進めている。 (3)研究成果のまとめ:上記(1)のシステム開発内容と評価実験の検証結果をまとめ,CISIS国際会議(2013年7月,台湾)およびICT国際ワークショップ(2013年11月,別府)で成果発表を行うとともに,国際論文誌に論文投稿を行った。また,(2)の新システム開発に関する研究内容について論文を執筆し,2014年7月開催予定のCISIS国際会議(2014年7月,英国)に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,前年度に研究開発を行った要素技術の評価と検証に焦点をあて,五感メディアの中でも比較的新たな適用分野である嗅覚や触覚に関連する複数の応用システムを開発して実証実験を行った。「研究実績の概要」の項目1で述べたように,当初の計画に従ってシステムの開発,評価実験と検証,および機能強化のための検討までを総合的に行うことができた。さらに,同項目2で述べたように,新たな応用分野を特定するとともに,研究開発を行っている五感情報処理技術の実効性能を検証するためのシステムを設計開発し,単体レベルでの評価を終えることができた。以上の成果については,7編の査読付き学術論文,および10編の査読なしシンポジウム論文および講演として発表を行った。これらの進捗状況は,ほぼ当初の計画どおりに進んでいると評価することができる。また,成果発表に関しては,当初の目標を大きく上回る成果をあげることができた。これらは,2名の課題分担者と常に綿密に打ち合わせを行いながら研究活動を行った結果であり,最終年度となる平成26年度の活動に向けて,研究内容のさらなる高度化と洗練化を常に念頭に置きながら,目標遂行に向けて継続努力する所存である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は本課題の最終年度であり,これまでに研究開発を行ってきた要素技術とそれらを統合化した各種応用システムの機能・性能について網羅的に評価し,開発した技術の汎用性および実用性について十分な実証実験と検証を行う。特に,実証実験の場として,市民向けのものづくり実験環境である「ファブラボ大分」を活用することで,世代や背景知識などが異なる一般市民を対象にした実験環境を構築し,多様な被験者によってシステムを評価してもらう。また,平成24~25年度に行った国際会議やシンポジウムでの成果発表において,関連分野の多くの研究者から有益な示唆や意見が得られており,これらの事項を評価実験の内容に反映させながら,開発した技術とシステムの完成度を高めて行く。また,これらの研究内容は鋭意論文・講演発表やデモ等で公開しながら,研究を総括する中で多面的な評価を受けられるようにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費および人件費・謝金の両費目を中心に次年度使用額が生じた。旅費については,成果発表を予定していた国際会議や国内シンポジウムが地元での開催となったこと,また,研究打ち合わせについても旅費が発生しない形で実施したことなどから,予定していた執行額よりも少なくなった。人件費・謝金については,当初予定していた実験内容を最終年度への実施に変更したことなどから,残額が生じる結果となった。 研究スケジュールの見直しにより,当初予定していた旅費および人件費・謝金の一部を最終年度の執行に移行できるように調整を行った。また,最終年度の実験に必要となる機器等,当初予算では計上していなかった内容も新たに導入することを考えており,最終年度予算と今回生じた次年度使用額を併せて,計画的かつ確実な予算執行を行う所存である。
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