研究課題/領域番号 |
24500152
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
辛島 光彦 東海大学, 情報通信学部, 教授 (90264936)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ハンドジェスチャ |
研究概要 |
当初タッチパネルにおける2次元GUIの代表的な17操作について,ハンドジェスチャ(以下ジェスチャ)による操作の特性をパフォーマンス,動作方法,操作感の観点から実験を通じて検討し,基礎的な資料を得る予定であったが,現在様々なジェスチャによる操作法が提案されているジェスチャ操作の黎明期にあるため,予定していた17操作が代表的な操作法とならない状況となっている.そこで平成24年度はあらゆるジェスチャによる2次元GUI操作の基礎となるポインティング操作とドラッグ操作に焦点を当て,その操作特性について実験を通じて資料を得ることとした. 実施計画通り,市場性のあるジェスチャ操作環境として,ジェスチャによるポインティングの位置情報を検出するシステムにkinectを用いた環境を構築し,実験を通じてポインティング操作についてのデータを収集した.その結果,ジェスチャによるポインティング操作においても,操作時間と難易度(移動距離,ターゲットサイズ)の関係は,マウスによるポインティング操作と同様にFittsの法則に適合することが示された.しかし適合度は相対的に低く,操作時間がターゲットサイズに比して移動距離の影響をより強く受ける傾向が示唆された. しかしこの傾向はKinectの位置情報の検出精度に起因している可能性があるために,より位置情報の検出精度が高いシステムを用いた環境下で追実験を行った.その結果,操作時間と難易度の関係はFittsの法則に適合したものの,Kinectの環境と同様に適合度は相対的に低く,Kinectの環境と同様の傾向が確認された. 以上の結果から,ジェスチャによる2次元GUI操作の基礎となるポインティング操作において,マウス操作とは異なる操作時間に関する特性が示唆され,この新たな知見は今後のジェスチャによる操作に適したGUI設計のための重要な知見となると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究はジェスチャによる2次元GUI操作における操作特性について,実験を通じて基礎的,定量的な資料を得るとともに,高齢者,障害者のジェスチャによるGUI 操作における配慮事項を明らかにすることを目的として研究を行っている. 平成24年度は、タッチパネルにおける2次元GUIの代表的な17操作について,ジェスチャによる操作の特性をパフォーマンス,動作方法,操作感の観点から実験を通じて検討し,基礎的な資料を得る予定であったが,現在様々なジェスチャによる操作法が提案されているジェスチャ操作の黎明期にあるため,予定していた17操作が代表的な操作法とならない状況となっている.そこで平成24年度はあらゆるジェスチャによる2次元GUI操作の基礎となるポインティング操作とドラッグ操作に焦点を当て,その操作特性について実験を通じて資料を得ることとした. まず実施計画通り,市場性のあるジェスチャ操作環境として,ジェスチャによるポインティングの位置情報を検出するシステムにkinectを用いた環境を構築し,実験を通じてポインティング操作の操作時間に関する特性を得た.しかしKinectの位置情報検出精度の問題から,得られた特性について,より位置情報の検出精度が高いシステムを用いた環境下での追実験による検証が必要となり,検出精度がより高いシステムを用いた環境を構築し追実験を行い,得られた特性の検証を行った. このように平成24年度は予定外の異なるシステムによる検証に時間を取られたため,ポインティング操作の操作時間に関する特性を得るに留まり,ドラッグ操作についての検討は次年度に繰り越す形となった.この点で本研究の達成度は,当初計画よりも「やや遅れている」と自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
現在までの達成度に記載したように,まず平成24年度に計画していたが実施できなかったジェスチャによるドラッグ操作について,Kinectを用いた環境及び高検出精度のシステムを用いた環境下において健常大学生を用いた実験を行い,ドラッグ操作についてのデータを収集し,その操作特性について資料を得る予定である. さらに平成24年度と同様にポインティング操作とドラッグ操作に焦点を当て,高齢者を対象として,ジェスチャによる操作の特性を操作パフォーマンス,動作方法,操作感の観点から実験を通じて検討し,高齢者に関するジェスチャによる2次元GUI操作の基礎的な資料を得る予定である.なお実験は健常大学生同様にkinectを用いた環境下で行われ,実験手順も健常大学生と同様とする.ただし多くの高齢者の協力が必要であることから,東京都港区,神奈川県平塚市の両シルバー人材センターに高齢者の協力を依頼し,研究代表者の所属機関の高輪,平塚の両校舎の実験室にて実験を行う予定である. 得られた高齢者の資料を健常大学生の資料と比較することにより,各操作における高齢者と健常大学生との差異を検討し,差異が生じた場合は,差異が生じる要因を既知の高齢者の身体的,生理的特性から明らかにし,ジェスチャによる操作に適したGUI設計のための高齢者に対する配慮事項を明らかにする予定である. また平成26年度は,ポインティング操作とドラッグ操作に焦点を当て,脳性まひ者を対象として,高齢者の場合と同様にジェスチャによる操作の特性を操作パフォーマンス,動作方法,操作感の観点から実験を通じて検討し,脳性まひ者に関するジェスチャによる2次元GUI操作の基礎的な資料を得るとともに,高齢者の場合と同様に健常大学生の資料と比較することにより,ジェスチャによる操作に適したGUI設計のための脳性まひ者に対する配慮事項を明らかにする予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
現在までの達成度に記載したように,平成24年度に計画していたジェスチャによるドラッグ操作について検討するための実験が行えなかったため,\141,491の研究費を繰り越す形となった. 前述のように平成25年度はまず平成24年度実施できなかったジェスチャによるドラッグ操作について検討するための実験をポインティング操作の場合と同一の環境下において行う予定である.繰り越し分の\141,491の研究費はこの実験の被験者謝金及び実験補助者の人件費に用いる計画である. なお平成25年度以降に請求する研究費については,当初計画通りの使用を計画している.
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