研究課題/領域番号 |
24500152
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
辛島 光彦 東海大学, 情報通信学部, 教授 (90264936)
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キーワード | ハンドジェスチャー |
研究概要 |
平成25年度はまず実施計画にはなかったが,健常大学生27名の被験者に,ハンドジェスチャ(以下ジェスチャ)によるポインティング操作の際と同一の課題をマウスを用いて行わせ,平成24年度に得られたポインティング操作の操作時間に関する特性が課題由来でないことを確認した. その上で高齢者を対象として,あらゆるジェスチャによる2次元GUI操作の基礎となるポインティング操作及びドラッグアンドドロップ操作の特性を,操作パフォーマンス,動作方法,操作感の観点から実験を通じて検討し,高齢者に関するジェスチャによる2次元GUI操作の基礎的な資料を得ることとした.実施計画通り,実験を通じてジェスチャによるポインティング操作及びドラッグアンドドロップ操作についての高齢者30名のデータを収集した. その結果,高齢者においても健常大学生同様,ジェスチャによるポインティング操作において,操作時間と難易度(移動距離,ターゲットサイズ)の関係は,Fittsの法則に適合するものの,その適合度は相対的に低く,操作時間に対して,移動距離と比してターゲットサイズが与える影響が小さい傾向が示唆された.ドラッグアンドドロップ操作においても,操作時間と難易度の関係は,Fittsの法則に適合するものの,その適合度は相対的に低く,操作時間に対して,移動距離と比してターゲットサイズが与える影響が小さいというポインティング操作と同様の傾向が示唆された.またポインティング操作においては,高齢者の操作時間は健常大学生と比して大きくなる傾向が示唆された. 以上の結果から,ジェスチャによる2次元GUI操作の基礎となるポインティング操作及びドラッグアンドドロップ操作において,高齢者の操作時間に関する特性が示唆され,この新たな知見は今後のジェスチャによる操作に適したGUI設計のための重要な知見となると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究はジェスチャによる2次元GUI操作における操作特性について,実験を通じて基礎的,定量的な資料を得るとともに,高齢者,障害者のジェスチャによるGUI 操作における配慮事項を明らかにすることを目的として研究を行っている. 平成25年度は、平成24年度と同様にあらゆるジェスチャによる2次元GUI操作の基礎となるポインティング操作とドラッグアンドドロップ操作に焦点を当て,高齢者を対象にその操作特性について実験を通じて資料を得ることとした. 実施計画通り,実験を通じてジェスチャによるポインティング操作及びドラッグアンドドロップ操作についての高齢者30名のデータを収集した. しかしこの実験の前に実施計画にはなかったが,健常大学生27名の被験者に,ジェスチャによるポインティング操作の際と同一の課題をマウスを用いて行わせ,平成24年度に得られたポインティング操作の操作時間に関する特性が課題由来でないことを確認する追実験も行った. この追実験に時間を取られたため,高齢者のジェスチャによるポインティング操作及びドラッグアンドドロップ操作の操作時間に関する特性を得るに留まり,健常大学生のジェスチャによるドラッグアンドドロップ操作についての検討は次年度に繰り越す形となった.この点で本研究の達成度は,当初計画よりも「やや遅れている」と自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
現在までの達成度に記載したように,まず平成25年度に計画していたが実施できなかった健常大学生のジェスチャによるドラッグアンドドロップ操作について実験を行い,健常大学生のドラッグアンドドロップ操作についてのデータを収集し,その操作特性について資料を得る予定である. さらに平成25年度と同様にポインティング操作及びドラッグアンドドロップ操作に焦点を当て,脳性麻痺者を対象として,ジェスチャによる操作の特性を,操作パフォーマンス,動作方法,操作感の観点から実験を通じて検討し,脳性麻痺者に関するジェスチャによる2次元GUI操作の基礎的な資料を得る予定である. なお実験は実験環境,実験手順とも健常大学生,高齢者と同様とする.ただし多くの脳性麻痺の協力が必要であることから,医療施設,社会福祉法人施設の脳性麻痺者の協力を依頼し,各施設に赴き実験を行う予定である. 得られた脳性麻痺者の資料を健常大学生の資料と比較することにより,各操作における脳性麻痺者と健常大学生との差異を検討し,差異が生じた場合は,差異が生じる要因を既知の脳性麻痺者の身体的,生理的特性から明らかにし,ジェスチャによる操作に適したGUI設計のための脳性麻痺者に対する配慮事項を明らかにする予定である. なお多数の脳性麻痺者の協力を得ることは容易ではなく,被験者数確保が課題となるが,脳性麻痺者に関わる作業研究のスペシャリストである連携研究者の西口宏美氏の協力を仰ぐことで対応できる予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
現在までの達成度に記載したように,平成25年度に計画していた健常大学生のジェスチャによるドラッグアンドドロップ操作についての実験を実施できなかった.そのためこの実験に予定していた被験者謝金及び実験補助者への人件費が使用されず次年度使用額が生じてしまった. 現在までの達成度に記載したように,平成25年度に計画していた健常大学生のジェスチャによるドラッグアンドドロップ操作についての実験が実施できなかったため,\151,901の研究費を繰り越す形となった. 今後の推進方策に記載したように平成26年度はまず平成25年度実施できなかった健常大学生のジェスチャによるドラッグアンドドロップ操作について検討するための実験を高齢者の場合と同一の環境下において行う予定である.繰り越し分の\151,901の研究費はこの実験の被験者謝金及び実験補助者の人件費に用いる計画である. なお平成26年度に請求する研究費については,当初計画通りの使用を計画している.
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