研究課題/領域番号 |
24500159
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
大島 登志一 立命館大学, 映像学部, 教授 (40434708)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 複合現実感 / 主観視点体験 / ミクストリアリティ / ビデオシースルーHMD / エンタテインメント |
研究概要 |
本研究計画に沿って、事例調査の実施、実験用ベースシステムの構築、HMD装着型の複合現実感体験の分析と制作・開発の方法論について第一次の指針をまとめた。本指針のまとめを実践的にすすめるため、学部生に制作・開発過程を指導しつつ、複合現実型エンタテインメント・システムなどの事例開発を実施した。一つは、立命館大学が運営する国際平和ミュージアムでの企画展「放射能と人類の未来」に展示アドバイザーとして参画し、実験的な取り組みとして制作・展示した『バーチャル原発ジオラマ』である。また二つ目は、エンタテインメント・システム『百鬼面』である。前者は、2013年5月から7月まで、同ミュージアムに実際に展示運営され、従来にない展示として、高い評価を得た。後者に関して、本取り組みの成果を検証すること目的として、バーチャルリアリティに関する国際的なカンファレンス・展示会として世界最大級であるLaval Virtual 2013のコンペティションReVolutionプログラムに本プロジェクトを投稿し入賞を果たした。72投稿中15作品が採択された厳しい中でも特に、他が工学系大学研究室の大学院生を含む技術的に高度なプロジェクトが多いところ、本作品は学部3年生が学習しつつ主な作業主体として制作した作品であり、当該制作開発指針が有効に機能するものであることの証左と考えられる。先行して実施している昨年度から二年連続での入賞であり、その確度は高い。実際に、当該作品をフランスのラヴァル市にてデモ展示し、評価テストを行った。専門家だけでなく、家族連れを含む多くの見学者がプレイを楽しみ、実用性の高いシステムを開発し得たことが示された。Laval Virtual 2013でのデモ展示での評価を元に協力会社と研究会を実施した。また、多感覚的ユーザインタフェースに関する試験的取組をインタラクション2013にてデモ展示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では本研究を5つの研究過程に整理し、(a)HMD式複合現実感体験の分析、(b)複合現実感応用システムの事例蓄積、(c)制作・開発に関する知見と方法論の体系化、(d)開発支援ツールの開発、(e)カリキュラム開発・試行を循環的に接続しつつ段階的に高度化させるとして、初年度は事例開発を通して一巡するとした。本年度の主要な研究実績として、①立命館国際平和ミュージアムでのインタラクティブ展示システム『バーチャル原発ジオラマ』の試行開発と展示実験、②国際的なバーチャルリアリティ展示会 Laval Virtual 2013 デモコンペティションへの応募と入賞・展示実験を実施したが、上記5つの研究課程のそれぞれに鑑みて評価すれば、一定の成果を達成していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の実績をもとに、事例開発を重ねて知見の集積・MR開発制作方法論の精緻化・制作教育へのフィードバック、そして企業連携による実践性の担保と、スパイラル式に研究を推進していく。その中で、エンタテインメント応用とミュージアム展示応用との2領域に注力する方策を計画している。また、その取り組みを検証する外部公表と評価実験について、海外と国内とで実施する。本年度早々試験的にカリキュラムに導入した当該MR開発制作方法論を「MRワークブック」としてさらにまとめ、制作教育に使用することで精度を検証していくとともに、事例開発の成果を迅速に反映していく。次年度、事例開発とその評価検証、「MRワークブック」の形での本研究成果の集積と発信の方向性で研究を進めていく。また協力企業との連携のもと、実務領域での制作にも試行適用し、その評価を問う。
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次年度の研究費の使用計画 |
主には外部公表とその評価・検証に予算執行を計画している。事例開発を行い、実地にデモ展示を行う過程をもって評価を行うため、前年の複合現実感システムの開発・展示・運用を行う。機材搬送、現地での実験とアンケートなどのデータ分析を行う。主な予算執行は、コンテンツ制作のためのデータモデリングや展示のための機材搬送と出張旅費、情報発信のために充当する。なお、現有設備で主に研究開発・実験を行っているが、外部公表・評価実験および複合現実感技術の実用性について普及・訴求するためにも、可搬性があり利便性の高いデモ展示用システムの試験構築も本研究を実施する上で重要な要素であり、そのための最小限の検討のためにも予算執行を予定する。特に、新しく発生した課題として、従来、協力企業からの無償貸与にて活用してきた、本研究計画の中心的機材であるビデオシースルーHMDの継続利用がむずかしい可能性があり、最低限の代替機材の検討を行うために研究費を執行する予定がある。
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