研究課題/領域番号 |
24500159
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
大島 登志一 立命館大学, 映像学部, 教授 (40434708)
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キーワード | 複合現実感 / エンタテインメント応用 / コンテンツ制作 / ヘッドマウントディスプレイ / 主観視点映像体験 / ミクストリアリティ / ビデオシースルーHMD / ユーザインタフェース |
研究概要 |
Laval Virtual 2013にて2013年3月末から4月初旬にかけてデモ展示を行ったMRエンタテインメントHyak-Ki Men(百鬼面)について制作・展示過程を検証し、日本バーチャルリアリティ学会大会での口頭発表およびSIGGRAPH ASIA 2013にてポスター発表を行った。『百鬼面』のほかにも、本フレームワークに沿って開発したMRエンタテインメントMR Cyborg Soldiersのデモ発表を実施し、MRシステムの制作開発の方法論「MRワークブック」の改訂を進めた。 実験用ベースシステムについて、オープンソースベースのフレームワークの開発を行った。併せて、システム構成上の改善として、大幅なコンパクト化を実現した。これにより、プログラム上もプレイヤを2名にしたり、主観視点映像と客観視点映像とを同時に実現したりすることが容易となった。さらに、2013年年度に開発したMRシステム「MR Coral Sea」に関して、2014年4月に開催されたLaval Virtual 2014のデモ展示では機材輸送・運用が低いコストで簡便に実現できた。 なお、本研究テーマに係る作品がLaval Virtualのデモ展示コンペティションReVolutionに3年連続の入賞を果たし、当該制作開発の方法論が有効に機能する証左として示しうると考える。また、研究を進める中で、本研究ではHMD装着型を基本とするがゆえにHMDを装着しないオーディエンス(一般観衆)とHMDユーザとの体験をいかに整合させるかが大きな研究課題として認識されることとなった。本研究では、MRエンタテインメントのフレームワークの中で、これをMR Physical Displayという名称で位置づけ、バーチャル空間を現実空間へと多感覚的に媒介するメディアとして今後の研究の中で重視していくこととした。MR Coral SeaはMR Physical Displayに重点をおいた事例として開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
協力企業2社の1社が複合現実感事業から撤退し、また他1社が研究の要となる設備ビデオシースルーHMDについて、貸与の継続を打ち切るという事象も発生したため、研究環境と企業連携体制に見直しを要する状況となった。しかしながら、研究環境に関しては、ビデオシースルーHMDに関する要求仕様を段階的に切り分け、本研究段階に必要な要件を精査することで、当該年度の研究遂行に最低限必要なソフトウェア開発環境および既存品を改造したHMDを準備することができた。企業連携体制については、関連する他企業との連携を新たに開拓しつつある。 本年度の主要な研究実績として、①『百鬼面』と『MR Cyborg Soldiers』の試行開発と展示実験、およびそれらを踏まえたMRコンテンツ開発制作指針の精緻化を実施し、②新たな事例開発の実施とLaval Virtual 2014 ReVolutionへの応募と採択を実現した。本研究テーマに係る作品がLaval Virtualのデモ展示コンペティションReVolutionに3年連続の入賞を果たした状況は、当該制作開発の方法論が有効に機能する証左として示しうると考える。また、研究を進める中で、本研究ではHMD装着型を基本とするがゆえにHMDを装着しないオーディエンス(一般観衆)とHMDユーザとの体験をいかに整合させるかが大きな研究課題として認識されることとなった。本研究では、MRエンタテインメントのフレームワークの中で、これをMR Physical Displayという名称で位置づけ、バーチャル空間を現実空間へと多感覚的に媒介するメディアとして今後の研究の中で重視していくこととした。MR Coral SeaはMR Physical Displayに重点をおいた事例として開発を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、カリキュラムの試行と事例開発による成果の検証と発信を行う。後期に計画している企業連携プロジェクトにより実践性を担保しながら、事例開発を高度化しつつさらに重ねてMRシステム構築・コンテンツ制作方法論の精緻化を制作教育へフィードバックしながら研究を進めていく。引き続き、エンタテインメント応用とミュージアム展示応用との2領域に注力する。 当該MR開発制作方法論を「ミクストリアリティ・ワークブック」としてまとめつつ、制作教育に適用して実践的に検証・改善を事例開発と並行して進め、成果を迅速に反映していく。 最終年度には、アウトプットとして、(1) システムアーキテクチャのフレームワーク、(2) ソフトウェアツールキット、(3) インタフェースデバイスやHMDを含む実験用フレームワークシステム、(4) (1),(2),(3)を活用してコンテンツ制作を行う方法論をまとめた「ミクストリアリティ・ワークブック」の4つの成果物を示す。また、研究を進める中で研究課題として重要性を増した事項は、MRエンタテインメント・システムにおける「オーディエンス(観衆)」の存在についてである。本研究課題は、HMD装着型を基本とするが、それゆえにHMDを装着しないオーディエンスとHMDユーザとの体験をいかに整合させるかが大きな課題として認識されることとなった。このような次期研究課題への発展的な接続を鑑みつつ、協力企業との連携のもと、実務領域での制作にも試行適用し、その評価を問う。また、その取り組みを検証する外部公表と評価実験について、海外と国内とで実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
Laval Virtual 2014の開催スケジュールと展示計画が当初想定する日程と計画から変更があったため、次年度使用額が生じた。すなわち、例年、Laval Virtualの開催日程は、概ね3月中旬から下旬、もしくは4月の初旬にかけて開催されることが多い。また、日程が確定するのが次年度に入ってからである。平成25年度は、Laval Virtual 2014の開催日程が平成26年の4月初旬となり、予算年度が次年度になったという点が第一の理由である。第二の理由は、研究実績の概要で説明したように、システム構成の大幅なコンパクト化を試みた点である。これにより、想定していた海外展示会への機材の空輸にかかるコストを節約することができた。以上2点、展示会の開催日程が予算年度としては平成26年度にかかったことと、空輸コストが削減できたということから、機材輸出入のコスト想定額が次年度使用額として生じた。 システムのコンパクト化によってデモ展示における機材輸送コストが削減できた一方で、協力企業からの貸与を想定していた研究の要となる設備であるところのビデオシースルーHMD(キヤノン製VH-2007)が使用できない状況となった。廉価なHMDとUSBカメラとを組み合わせて実験機材を試作し研究活動を継続したが、解像度・画角・視線のずれ・立体視精度など各指標の精度には短所があり、最終年度の成果を担保するため、位置合わせ機能のある開発環境も含めた代替設備を利用する予算として執行を計画する。次年度執行分も併せて有償による一時的な貸与や、他のHMDを利用しての試作を試みる。
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