本研究では、複合現実感技術に関して特に、高い没入感と臨場感を特長とするビデオシースルー型頭部装着型表示装置(HMD)を用いた主観視点体験型の複合現実感応用システムに着目し、総合的な視点から複合現実感応用システムの実利用面での普及に資することを目的とした。当該装置構成を前提とした体験の特質を改めて分析し、その特徴を踏まえたコンテンツのデザイン・制作とシステム開発の知見を方法論として整理し、体系化を行うものであった。また、それと併せて、当該システム形態に適するユーザインタフェースの研究を進め、コンテンツ制作・開発のためのソフトウェア・ツールの開発も行うとした。 研究期間を通じてシステム開発の事例を重ね、知見を制作教育のカリキュラムの形で体系化を進めた。国内外でのデモ展示実験を実施し、コンテンツの実利用性向上の観点に基づいた評価・考察を行った。システムの技術的な改良を行うだけでなく、事例としてはエンタテインメントの枠組みに絞りつつコンテンツの特質に沿った運用・演出方法などの知見を蓄積した。 最終年度では、成果のまとめに取り組み、期間全体のほぼ半数の成果発表を実施した。2件の国際カンファレンスと6件の国内カンファレンスでの成果発表・デモ展示を実施した。本研究計画初年度にまたがる年度以降器も含めれば計4回の国際会議での展示実験を実施した。バーチャルリアリティに関する国際展示会・カンファレンスLaval VirtualのデモコンペティションReVolutionに3回、SIGGRAPH ASIAの体験型技術展示セッションEmerging Technologiesに1回採択されており、これらが一定の厳格な審査基準によることと、本件が学部生を主体とした実証的制作プロジェクトであることから、技術的にもコンテンツ的にも本取組みの制作・開発知見の体系化が寄与するところと判断できる。
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