研究課題/領域番号 |
24500161
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 函館短期大学 |
研究代表者 |
植月 美希 函館短期大学, その他部局等, 講師 (70431781)
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研究分担者 |
安藤 英由樹 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (70447035)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヒューマンインターフェイス / デジタル文章表示 / 感性的評価 / 文章理解 |
研究概要 |
本年度は、動的な文章表示方法による感性的評価の変化を主に検討した。文章がなぞり動作によって現れる文章表示方法が読み手にどのような印象を与えるのかを、主にSemantic Differential法を用いた心理実験によって検討した。その結果、文章タイプによらず、文章の文字コントラストを急速に変化させると、動的、冷たい、かたいといった印象を与え、逆に文字コントラストを緩やかに変化させると、静的、温かい、やわらかい印象がもたらされることが明らかになった。さらに、小説タイプの文章では、文字コントラストを緩やかに変化させたほうが、より文章に合っていると感じられることが明らかになった。この結果は、文章を動的に表示することで、静的な表示とはことなる読文印象、具体的には音声言語が持つような時間的な変化、温度感、やわらかさといった表現を文字表現に組み込むことが可能であることを示唆している(丸谷・植月・安藤・渡邊, 2013)。 また、本年度は学会(ACM Multimedia 2012 Multimedia Are Exhibition 2012 Eternal / Moment, Nara)で我々が使用している文章表示システムを展示し、また、展覧会(平成24年度文化庁メディア芸術祭協賛事業「文学 Media Art展 紀貫之からライトノベルまで」)のワークショップで、一般参加者に本文章表示システムを用いて、表示形式の違いによる文章の印象変化について体験してもらう機会を設けるなど、一般への研究成果の周知・普及活動を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度(24年度)に予定していた「動的な文章表示方法による文章理解のパフォーマンスの変化を検討する」という課題に関しては、刺激の選定が難航したため、予備実験を繰り返し、来年度の実験実施の準備を行った。 このような状況から、次年度(25年度)に実施を予定していた「動的な文章表示方法による感性的評価の変化を検討する」という課題について、先に本年度に進めることとした。その結果、文章の文字コントラストを急速に変化させると、動的、冷たい、かたいといった印象を与え、逆に文字コントラストを緩やかに変化させると、静的、温かい、やわらかい印象がもたらされることが明らかになった。文章を動的に表示することで、静的な表示とはことなる読文印象、具体的には音声言語が持つような時間的な変化、温度感、やわらかさといった表現を文字表現に組み込むことが可能であることを示唆している。 この成果については、日本心理学会第76回大会(植月・丸谷・安藤・渡邊, 2012)でポスター発表を行うとともに、情報処理学会論文誌に論文が採択された(丸谷・植月・安藤・渡邊, 2013)。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は当初予定していた「動的な文章表示方法による文章理解のパフォーマンスの変化を検討する」という課題で予備実験までしか進展しなかったので、刺激を選定し、本実験を開始する予定である。 一方、本年度は「動的な文章表示方法による感性的評価の変化を検討する」という課題について実施した結果、なぞり動作に反応した文章表示によって、読み手の文章の印象が変化することが示された。そこで次年度は、「なぞり動作」が読み手の印象変化においてどのような役割を果たすのかを検討する。 具体的には、人間のなぞり動作による文章表示から受ける感性的評価と、なぞり動作と同じ平均速度を持つ自動文章表示から受ける感性的評価を実験的に比較し、なぞり動作が読み手の印象変化に果たす役割を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は実験用機材の購入や研究発表の旅費の支出を優先させた結果、購入予定であったデータ分析用の機材(約20万円)の購入資金に不足が生じ、10万円ほどの次年度使用額が発生した。この次年度使用額は次年度の研究費と合わせて、データ分析用の機材購入を行う。また、次年度も引き続き、順次新しい機材(タブレットPC)の発売にあわせて、実験用機材の購入も進める予定である。 また、次年度も学会発表や研究打ち合わせ等を行い、その旅費を支出する予定である。その他、機材運搬費、書籍購入費、消耗品購入費等の支出を行う予定である。
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