研究課題/領域番号 |
24500161
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研究機関 | 函館短期大学 |
研究代表者 |
植月 美希 函館短期大学, その他部局等, 講師 (70431781)
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研究分担者 |
安藤 英由樹 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (70447035)
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キーワード | ヒューマンインターフェイス / デジタル文章表示 / 感性的評価 |
研究概要 |
本年度は、文章がすべて消えた状態から順番に徐々に文字が現れては消える動的な文章表示方法(自動文章表示)において、その提示速度が読み手の印象といった感性的評価にどのように影響するのかについて、主にSemantic Differential法を用いた心理実験によって検討した。その結果、文章の提示速度が5-6文字/秒の速度で、もっとも読みやすく、好ましい、人らしいといった印象が強まることが明らかになった。また、それ以上速い速度、あるいは遅い速度で提示した場合には、読みやすい、好ましいといった印象は弱まることが示された。この傾向は、難易度の異なる文章でも確認された。 なぜ、この5-6文字/秒という速度で読みやすくなるのか、その手がかりを得るため、同じ文章をすべて表示した状態で、黙読、音読させ、その速度を測定した。また、上述の動的な文章表示と同様の視覚刺激を実現するため、なぞり読み動作によって文字が現れては消える文章表示法を用いて、なぞり読み速度を測定した。その結果、音読、なぞり読み速度の平均が、5-6文字/秒であることが明らかになった。従って、音読やなぞり読みをする速度で動的な文章表示を行った際に、読みやすく、好ましい印象が強く得られることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年、デジタルディスプレイの普及に伴い、動的な文章表示を目にする機会が増加しているが、これまで、どのような提示速度で表示した際に読み手が読みやすく、印象深くなるのかといった点については、よく分かっていなかった。しかし、本研究で行った動的な文章表示(自動文章表示)における感性的評価の測定から、読み手が音読、あるいはなぞり読みする速度(5-6文字/秒)で提示した際に、読み手は読みやすさを感じ、その結果、好ましいという印象を強く得ていることを明らかにした。また、これらの感性的評価は、文章の難易度が異なる文章でも一貫して認められることが明らかになった。 しかしながら、今年度は一定速度で文章が提示される動的な文章表示のみを対象としており、なぞり読みに応じた動的な文章表示形式については検討できていない点が課題である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、一定の速度で自動的に文章を表示するという動的な文章表示形式について、読み手の感性的な評価を測定した。同様に、他者のなぞり読みを再現する形での自動文章表示(提示速度が一定ではなく、随時変化する)を行い、読み手の感性的な評価を測定することで、動的な文章表示の印象が増す可能性がある。そこで次年度はこの点について、今年度と同様の手法を用いて検討する。また、これまで実験を進めてくる中で、感性的評価に個人差があることも明らかになってきた。そこで、このような個人差がどのような要因(例えば、ワーキングメモリスパンなど)と関連があるのかについても、あわせて検討したいと考えている。 また、次年度は最終年度でもあることから、これらの検討と並行し、これまでの成果を論文にまとめる作業を確実に進めていきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、新たに実験機材を購入する必要性がなく、そのため、予定していた購入資金が消化できず、10万円ほどの次年度使用額が発生した。この理由としては、計画を早めて昨年度に実験機材を多めに購入していたこと、今年度は新たな実験機材が発売されなかったという事情や、今年度は個別実験が中心で同時に大量の実験機材を必要としなかったという事情が挙げられる。 次年度に新しい実験機材が発売された場合には、今年度発生した次年度使用額を、それらを購入する資金として使用する予定である。また、次年度も、学会発表や研究打ち合わせを行い、その旅費を支出する予定である。その他、機材運搬費、書籍購入費、消耗品購入費等の支出を行う予定である。
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