本年度は、昨年度に続き、これまでに明らかになった動的文章表示における読みやすく、好ましい印象が得られる速度と、静的に表示される(動かない)文章を黙読、音読、なぞり読みする場合の速度との関連を、難易度の異なる2種類の文章を用いて実験的に検討した。 まず、文章を自動的に動的表示した場合と、静的に表示した場合(全表示)における読み速度の変化について調べたところ、機械的な動的文章表示における読み速度は、静的な文章表示における黙読速度の60~70 %であることが分かった。また、動的文章表示においては、文章難易度の影響は、黙読より小さいことが明らかになった。 そこで、動的に文章を表示すると読み速度が低下する原因を検討するため、読み手がペースを決定できる動的表示での読み速度と、自動的な動的表示の読み速度を比較した。その結果、読み手ペースでの動的文章表示でも、読み速度が遅いことが示された。従って、動的文章表示そのものが、読み速度の低下をもたらすと考えられる。 そして、動的文章表示におけるこのような読み速度の低下は、豊かな読文印象を生起させると考えられる。動的文章表示においては、読み手は読みのモードを変え、静的な文章を読む場合よりも注意深く読んでいると考えられる。
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