研究課題/領域番号 |
24500166
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
澤村 一 新潟大学, 自然科学系, 教授 (40282991)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ハイダーの均衡理論 / 数理議論学 / 抽象議論フレームワーク / 社会心理学 |
研究概要 |
議論は知的エージェントに必要な推論機構と通信機構が初めから内在している計算機構であり,社会的知能を計算機上に実現するための有力なメカニズムとなっている.これまでこれを支える理論としてDungによる抽象議論フレームワークとその意味論が最も有力視されてきた.この理論で最も重要な概念は議論の受理可能性であり,これをもとに議論の正当性,妥当性が定義されてきた.しかしながらこれをハイダーによる社会科学の視点および知見から考えると,一つの側面からしか議論の正当性,受理可能性を捉えていない. 本研究では,ハイダーの均衡理論を十分に反映した,新しい議論の受理可能性の概念を探求し,それに基づいてより精度の高い議論の理論を構築する. 本年度は,ハイダーの均衡理論を反映した議論の理論の構築と意味論の形式化を行い,議論の攻撃関係と支持関係の双方を含むいろいろな議論グラフに対して我々の理論の妥当性を検証した.今のところ,この意味論は,攻撃関係に特化した場合,基礎意味論とほぼ同等の結果を与えているといえる. また,ハイダーの均衡理論を反映した議論の理論を組み込むために,これまで研究してきた多値議論に基づく議論システムを整備し,一部オープンソフトウェアとして公開した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,社会科学におけるハイダーの均衡(バランス)理論を十分に反映した新しい議論の正当性,受理可能性の定義を新たに考え,それに基づいてより精度の高い議論の理論を構築することができた.このような試みは世界的にも全く初めてのものであり,定義の根幹に関わる問題 であるので,現在世界的に行われている議論研究の方向性やその応用に与える影響は極めて大きく,議論研究の世界を今後リードするアプローチとなるものであると考えるからである.
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今後の研究の推進方策 |
以下のポイントに特に力を入れて研究を進める. ・議論の攻撃関係と支持関係を含むさらに多様な議論グラフに対して我々の理論の妥当性を検証する. ・議論意味論に対応する対話的証明論の形式化を図る.これによって,妥当な議論が対話の流れとして理解,説明できるようになる. ・他の意味論との理論的な関係を詳細に調べる. ・ハイダーの均衡理論を反映した議論の理論に基づく議論するエージェントの試作する. ・以上の結果をできるだけ早く国際会議に発表し,世界の議論研究者に問う.
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次年度の研究費の使用計画 |
ハイダーの均衡理論に基づく議論の理論に基づく議論するエージェントの試作のため,パソコンを導入する. また,外国の研究者との研究交流および共同研究によって,さらなる進展を図るため(日本には,議論研究者はほとんどいない),議論の基盤研究を行っている研究者を研究室に招くことを計画する.
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