研究課題/領域番号 |
24500167
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
高木 理 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (30388011)
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研究分担者 |
橋田 浩一 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (00357766)
村田 晃一郎 北里大学, 医学部, 講師 (40157780)
和泉 憲明 独立行政法人産業技術総合研究所, 知能システム研究部門, 研究員 (50293593)
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キーワード | 医療サービス / 質評価 / 質指標 / オントロジー / 医療データベース / 医療データウェアハウス / 形式手法 / データ統合 |
研究概要 |
患者視点で医療サービス評価を行うための指標(質指標)の設計を支援し、さらに、各病院の医療DBを用いて設計された質指標の値を自動的に算出する、質指標設計・計算フレームワーク(質指標FW)の基礎研究として、以下の研究を行った。 (1)初年度(平成24年度)では、質指標を適切に設計するための、医療サービス評価記述パターン(MSADP)と、MSADPに基づくオントロジーである医療サービス評価オントロジー(MSAO)を開発した。昨年度は、MSADPとMSAOをベースにして、適切な質指標の集まりを体系的に選択・設計するための医療サービス評価モデル(MSAM)と、MSAMを用いて一連の質指標を選択・設計する手法の研究開発を行った。MSAMに基づく質指標の設計手法は、情報システムのモデル駆動型開発(MDD)におけるテスト構築手法を援用して質指標を選択・設計する、というアイディアに基づいている。MSAMに基づく質指標の選択・設計手法によって、一連の質指標をより体系的に得られると共に、最終的に得たい質指標と実際の医療DB上のデータを用いて計算することが可能な質指標のとのギャップを、より明確にすることが出来る。 (2)質指標FWにおける質指標表現システム(QI-RS)の表現力を評価するために、これまでに数多くの質指標を開発してきた組織である経済協力開発機構(OECD)が2013年に公表した大規模な質指標群を調査した。この調査の結果、OECDによる質指標の多くが質指標FWの範囲外にあるものの、患者視点に基づく病院内の医療サービスの質評価という観点で質指標を限定するならば、QI-RSによって得たい質指標が十分に設計できるかどうかの問題は、質指標の定義に用いられているIDC10などの特定の術語が医療DB上のマスターの概念でどのくらい定義できるか、という問題に帰着できることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のテーマは、患者視点に基づいて病院の医療サービスを公平に評価するための質指標を設計する、分かりやすさと正確さを両立させた表現システム(QI-RS)と、QI-RSを主軸とした質指標設計・計算フレームワーク(質指標FW)の研究開発である。 平成24年度の前半の研究は、質指標FWを用いて、患者視点による医療サービス評価の目的に合った質指標を設計する上で重要であり、一方、後半の研究は、QI-RSの表現力ひいては有用性を評価する上で重要な役割を果たしている。 しかし、一方で、質指標設計・計算フレームワークの研究開発には、質指標の設計支援と、医療DBに基づく質指標の値の計算を行うシステムを実装し、実際の病院に導入することが出来るかどうかが重要である。そして、これを実現するためには、現在開発中の、QI-RS上のオントロジーである医療サービスオントロジー(MSO)と医療DB上のスキーマとの対応付けを行うマッピング・システムを実際の病院に適用できるようにする必要がある。今後は、MSOを拡張しつつ、MSOと実際の医療DBとに対応するマッピング・システムを開発・改良することが重要な課題となるだろう。さらに、QI-RSを改良して、より簡潔に質指標を設計するための言語の開発も重要な課題であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
(1)これまでに行ってきた、質指標FWにおける医療サービスオントロジー(MSO)と医療DBスキーマとのマッピングを定義するためのマッピング言語の研究開発を進める。このマッピング言語によって、実際の医療DBのスキーマを熟知している現場のシステムエンジニアに大きな負担をかけさせることなく、MSOと個々の医療DBスキーマとの対応関係を定義させることが可能になる。さらに、これまでに行ってきた、MSOに基づく質指標を個々の医療DBスキーマ上のクエリに基づく計算式へと変換するマッピングシステムの開発も継続し行い、実際の病院に設置されている医療DBと連結が出来るようにする。このマッピングシステムによって、質指標の値を自動的に計算するシステムを完成させる。 (2)これまではQI-RSをグラフベースの質指標の表現システムとして開発してきたが、より簡潔に質指標を設計するために、文字列ベースでの質指標の表現システムの研究開発も行う。そのために、これまでの医療サービス評価記述パターンを更に詳細化する。より詳細化されたパターンを背景知識として用いることにより、これまで以上に簡潔な表現で、より正確な質指標の定義を行うことが可能になる。 (3)質指標FWの実装となるプロトタイプを用いて、群馬大学医学部附属病院および北里大学における導入実験を行う。計画としては、まず、群馬大学医学部附属病院における導入実験を行い、そのデータを用いて、北里大学病院への導入実験を目指す。 (4)昨年度から行ってきた、頻度や尤度を表現するための表現手法と論理体系の研究開発を継続して行う。これらの研究によって、従来では定義できなかった、より柔軟な条件文による質指標を、シンプルな条件文を用いて容易に定義できるようになることが期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は概ね順調に進められてきたが、3月に購入予定だった書籍や計算機関連機器を購入する必要が無くなったために、研究費が48,523円ほど残った。そのため、余った費用を今年度に繰り越すことにした。 繰り越された金額は国際会議のための海外出張費の一部として使用する予定である。
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