研究課題/領域番号 |
24500182
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
松本 一教 神奈川工科大学, 情報学部, 教授 (40350673)
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研究分担者 |
大須賀 昭彦 電気通信大学, 大学院情報システム学研究科, 教授 (90393842)
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キーワード | データマイニング / 時系列データ / 潜在的状況 / レスポンス時間 / 相関ルールマイニング |
研究概要 |
効果的なデータマイニングの適用のためには,データマイニングアルゴリズムで処理可能なように,必要なデータを単一データベースとして整える必要がある.一般的には,必要な情報が複数の情報源に分散しているため,作業のコストが高く自動化が必要である.この解決のために,本年度では主として以下のアプローチにより,未知のデータを自動的に獲得して,それを指標として用いることで自動的なデータ融合を行う方法の開発を行った. 本年度の研究開発では,個人の嗜好に関するデータとその上でのデータマイニングを対象とした.アンケート等による調査で集めたデータを想定するが,データ収集時に回答者にスマートフォンを身に着けさせ,内蔵センサーにより加速度データ等を自動的に収集するようにした.これまでに研究を行った時系列データマイニングの技術を拡張して,回答者の潜在的な状況を収集したデータから自動的に判定できる方式を開発した.この方法は,時系列データの類似性を自動的に判定して特徴抽出を行うことが特徴である.この手法は様々な状況で応用できる.例えばテレビ視聴時に身に着けたスマートフォン加速度データから,どの程度の興味を持って見ていたのかを判定することも可能となる. 判定した情報を付加的に用いることにより,回答データの類似性を判定し,それに基づいて情報の融合ができる方法を開発した.開発した方式の有効性を評価するために,実験を行った.上述のようなテレビを視聴しながらのアンケート回答実験も一例である.その結果,どの程度の興味を持ってテレビを見ていたのかを約80%程度の精度で定量的に判定でき,その結果を補助的な指標としてデータ融合に利用可能であることが実証できた.この方法を発展させて,アイトラッカーにより獲得した視線データを同様に用いる方式のプロトタイプも開発し有効性の基礎評価を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請の研究開発では,理論的な方向からの研究と実装や実験を主体とした応用的な方向からの研究開発から構成されている.前年度までは,理論的な研究の点でやや遅れがあったが,本年度ではその遅れをほぼ取り戻すことができたと判定している.実装と実験を主体とした研究では,予定通りにシステム開発を進めることができ評価実験も行って,概ね予想に近い評価結果を得ることができた. 本年度に人間の視線移動のデータに着目するという新たな方向性を探った.その結果として,視線データには多くの情報が潜んでいることが分かり,次年度に向けて予備的な方式開発を行うことができた.その方式に基づいたプロトタイプシステムの基本部分を実装することができ,次年度に向けた基礎データを得ることができたため,新たな研究開発の見通しを得ることもできた.このような点から総合的に判定して,本申請の研究は概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
本申請の研究が最終年度のため,研究成果を広く公開することを予定している.国内発表や海外発表を複数計画し予算化している.同時に研究室で運営しているホームページ上においても成果公開を行い,社会で本研究開発が活用できるようにしていく予定である. 本研究では複数の情報源に分散するデータを融合することで,強力なデータマイニングが可能となることを実証してきている.この研究を通じて,データ収集時に,できる限り多くの,付加的な情報を収集して記録しておくことが,有効であることを明らかにしてきている.例えばアンケートデータを収集する際に,回答者に加速度センサーを身に着けさせることや,視線トラッカーを用いること等が考えられる.このような装置を使って収集したデータは,そのままの形式では利用が困難であるが,いったんデータマイニングの技術によって知識としてのデータに変換しておくことにより,その後の高度な利用が可能となる.複数情報源のデータを融合する場合においても,その利用が有効であることが本研究を通じて判明してきている.スマートフォンや携帯可能な小型センサー類の急速な普及などにより,このようなアプローチが広く可能となってきている.今後においては,本研究で新たに判明した知見を実用化するための研究開発に取り組んでいく予定である.有効なデータの収集により,データマイニングをいっそう効果的に行うという技術を更に発展させていく.
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