研究課題/領域番号 |
24500184
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
山内 康一郎 中部大学, 工学部, 教授 (00262949)
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キーワード | 昆虫脳のアルゴリズム / マイクロコンバータ / 太陽電池 / 追加学習 / learning on a budget |
研究概要 |
H25年度はH24に引き続き組み込み機器向けの学習法すなわち、微小の人工脳(人工昆虫脳)のアルゴリズム開発を継承して行った。またマイクロコンバータの性能評価とその問題点克服法を開発しJournal投稿を行った。 人工昆虫脳のアルゴリズム開発では(1)Operating SystemにおけるページングアルゴリズムであるLeast Recently Used およびLeast Frequently Usedを組み合わせたLRFU法を従来法に組み合わせ、環境変化に対処できるアルゴリズムを開発した。現在これについては国際会議での発表を目指して準備中である。(2)新しいサンプルをそれまでに学習したデータの分布に応じて、既存のカーネル空間に射影する割合を最適設定するアルゴリズムを開発してIJCNN2013に発表した。 人工昆虫脳を組み込んだ太陽電池用マイクロコンバータに関しては、(1)複数のマイクロコンバータが直列接続された場合、一部の太陽電池パネルの出力が変化するだけで、全体が不安定になり最大電力点への収束が遅くなるという問題が生じていた。これを解決するために、出力電流を一定にして一部の出力の変化が他のコンバータに影響を与えないようにする方式を採用した。この方式によって当初の目標である高速制御が達成できることを電子負荷装置を用いた予備実験で確認した。(2)軽量化したLGRNNアルゴリズム:LGRNNLightを開発して採用した。このアルゴリズムはカーネルの上限個数をBと置くとO(B^2)で計算可能である。また、カーネルのハイパーパラメータを最適化する能力も持つ。ここまでの成果(学習アルゴリズムLGRNNLightとこれを利用したマイクロコンバータ)をまとめて、Journalへの投稿を行い、Acceptされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画にあったDual Coreマイコンによる高速実行を目指していたが、 計画されていたチップが近い将来廃盤になるとの情報を得たこと、および価格が高価になってしまうことを勘案して、シングルコアのRx63シリーズに切り替えた。現在このためにプログラムを移植する段階にあるが、従来使用していたコマンドを新規チップ用に書き換える際に、その代替コマンドの探索と調査、検証を踏まえる必要から、相当な時間を必要としている。 また、当初、新しくIJCNN2013で発表した学習アルゴリズムをLGRNNに適用する計画であった。しかし線形学習器であるKernel Perceptronをもとにして構築した理論であるため、非線形学習器であるLGRNNに適用するの時間を要している。つまり近似的に適用する手法を開発する必要があり、これまでに主に2通りの方法を考案するも、実用上、いずれも一長一短を抱えている。
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今後の研究の推進方策 |
H8-3069用に書かれたプログラムを、Rx63用に書き換える方向で作業しているが、これを早期に完了させる。また、当初計画のRTOSによる学習プロセスと認識プロセスのマルチスレッド化に関しては、ARMコアをベースとした別のチップで実行するものとして、フリーRTOSによる実装と評価を目指すことにする。 学習アルゴリズムについては、非線形な特性を持つGRNNへの適用にあたり、線形モデルで構築してきた学習アルゴリズムを近似的に適応する。この際に、学習結果の質と手続きの複雑さを勘案して割り切った簡略方法を採用し、問題の早期解決を目指す。 そして、現在一方で開発中の、LRFUとを導入した学習法との統合を急ぐと共に、メタ知識を用いた学習戦略の切り替え手法の開発に急いで持ち込みたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
Journal投稿のため、印刷費を確保する必要があった。また、新しいマイコンチップへのプログラムの移植に想像以上に手間がかかり、次のステップへと進めなかったため。 JACIIIに掲載が決定している雑誌の印刷費として使用すると共に、新しいマイコンを使ったコンバータの設計とプリント基板設計委託および製作用に使用する。
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