研究課題/領域番号 |
24500189
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研究機関 | 大阪学院大学 |
研究代表者 |
大谷 朗 大阪学院大学, 情報学部, 准教授 (50283817)
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キーワード | 組合せ範疇文法 / CCG / 概念意味論 / CS / 格交替 / コーパス |
研究概要 |
本研究では,文の構造と意味との関係を明示的に理論の中に取り込んだ組合せ範疇文法(CCG: Combinatory Categorial Grammar)の枠組みに基づいて,これまで手動で記述されてきた意味情報を,形態・構文情報が付与されたテキストコーパスから(半)自動的に抽出することを目的として調査研究を推進してきた. 今年度は,構文構造とその論理形式をCCGに基づいて一般的に記述する方法を提案するべく,構文情報が付与されたテキストから意味情報を抽出する方法の検討を開始したが,項としても付加語としても生起する後置詞ニでマークされた句の取扱いの問題に直面した.この構文的にも意味的にも多義な二格要素は,必須項であれば格パターンに基づく動詞の分類からその分布が捉えられるように思われたが.様々な用例をコーパスから抽出して精査してみると,動詞の意味クラスによってはいわゆる場所格交替が生じており,二格の代わりにデ格が用いられていることがわかった. 組合せ範疇文法は、他の文法理論では容易に形式化できない長距離依存や並列構造などにおける述語の項構造の同定が可能な枠組みではあるものの,格や項の交替における対応する項を同定する機構,いわゆるリンキングの仕組みは備えておらず,そのままでは場所格交替の意味的制約が捉えられない.そこで,本研究では緊要の課題として,日本語のいわゆる二-デ交替を例に,Jackendoffの概念意味論のリンキング機構を取り込むことで,組合せ範疇文法が意味論的により頑健となるように枠組みの拡張を試みた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
構文構造とその論理形式をCCGに基づいて一般的に記述する方法を提案するべく,コーパスから用例の抽出,精査を行ううちに,項としても付加語としても分析が難しい二格要素の取扱いに関する諸問題を認識した.特に二格とデ格に関する場所格交替の理論的形式化には,まず言語学的な分析によって動詞の意味クラスの制約を検討することが必須となるが,そうした作業を包括的に行う困難に加え,制約の精緻化に必要となる構文構造と意味形式のリンキング機構が,本来の組合せ範疇文法には備わっていないため,場所格交替の精緻な分析を踏まえつつ枠組みを独自に拡張しなければならなくなった.このような理論的,技術的問題に時間を費やした結果,より汎用的な論理形式の抽出を目指したプログラムの基本試作を今年度中に行うには至らず,計画が遅れることとなった.
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今後の研究の推進方策 |
1.組合せ範疇文法に基づく日本語の言語学的分析(前年度より継続分) ただし,あまり個別の言語現象の分析には深入りしないように留める 2.構文情報から意味情報への変換 1によって得られた構文と意味の対応付けに関する組合せ範疇文法に基づいた制約を用いて,構文情報が付与された文から意味形式を抽出するアルゴリズムを設計する(今年度前半の中心的課題) 3.コーパスからの意味形式の抽出に関する実験,評価,そして研究の総括(今年度後半のまとめ)
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