研究課題/領域番号 |
24500195
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
三河 正彦 筑波大学, 図書館情報メディア系, 准教授 (40361357)
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キーワード | 小惑星探査ロボット |
研究概要 |
本研究の目的は,無線ネットワークを利用した複数の小型ロボット(ローバ)による小惑星表面探査手法を確立することである.小惑星探査ロボットに要求される機能は,(1)移動機能,(2)小惑星探査機能,(3)自己位置推定機能,(4)省電力設計の4点である.我々の提案する小型探査ロボット群により,小惑星上を効率良く探査活動できる.また各ロボット間通信の電波強度(RSSI)を利用した自己位置推定機能により,位置を特定した探査・分析も可能となる.冗長な通信経路を確保するメッシュ型ネットワークにより,トラブルに対する頑健さも備える.本研究課題では(2)~(4)の機能の実現を分担し,次の3つの目的に重点を置き研究を進めている.<目的1>省電力通信規格ZigBeeにより動的なメッシュ型ネットワークを構築する.<目的2>RSSIを利用し,複数の探査ローバ間の相対位置推定機能を実現する.<目的3>省電力マイコンを用い,タスクに応じた消費電力を評価した最適設計する. はやぶさ2に搭載される小惑星探査ローバMINERVA-IIへ本研究課題の不採択が決まったことから,本研究課題の目的を次世代以降の小惑星探査機に変更し,研究2年目となる2013年度は,本研究課題の最も重要な<目的2>の検討を中心に行った.通信時に得られるRSSIとローバ間の距離の関係に基づき,各ローバ間の相対距離を推定する遺伝的アルゴリズムのパラメータ調整や相対距離選択方法等の改良を行った.その結果,2台のローバ間の地面が平らであるという仮定の下で,3台のローバを用いた場合の推定相対距離結果が0.2~2.3%の誤差(平均1.2%),5台で1.1~6.2%の誤差(平均3.4%),9台で0.3~10.9%の誤差(平均3.9%)という結果が得られた.さらに地面の起伏を想定し,起伏を表すパラメータも同時に推定する手法を提案し,現在も検討を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2台のローバ間の地面が平坦であるという仮定の下で,複数のローバ間の相対位置推定が精度良く行われることを確認できた.また,起伏のある地面も想定し,起伏を表すパラメータと相対位置を同時に推定する手法も提案することができた.地面に起伏のある場合の相対位置推定精度は,まだ平坦な地面に比べて劣るが,最終年度に向けて,推定手法の改良を進める予定である.
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今後の研究の推進方策 |
はやぶさ2およびMINERVA-IIへの搭載は残念ながら不採択となったが,我々が提案する複数の小型ローバによるセンサネットワークと相対位置推定情報を活用した小惑星探査システムの新規性は,次世代以降の探査計画に提案して行く.様々な計画により柔軟に適用できるように,本研究課題最終年となる2014年度は,現在使用している2.4GHz帯のZigBeeに加えて,電波の回り込み特性に優れた900MHz帯のZigBeeを用いた試作危機の作製および位置推定実験の実施,さらに地面の起伏も考慮した相対位置推定アルゴリズムの改良,精度の向上等を進める予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は研究計画2年目の2013年度にロボットの試作を行う予定であったが,はやぶさ2へ搭載される小惑星探査ローボMINERVA-IIへ,本提案が不採択となったため,本研究計画の適用ターゲットを次世代以降の小惑星探査機に変更することとなり,それに伴い,試作機の製作よりも相対位置推定手法を優先して検討を進めた.その計画変更に伴い,試作機製作費用が次年度で使用されることとなった. 上記の理由から,試作機の作製を,はやぶさ2へ搭載されるローバのフライトモデルから,次世代以降の小惑星探査計画を想定して,より様々な環境下に適用可能な900MHz帯のZigBeeを用いたものへ変更して,検討を進めることとする.同時に,従来の2.4GHz帯のZigBeeを用いた試作機も合わせて,対環境試験等の実用化を踏まえた実験も行う予定である.また,本研究の最も重要な小惑星探査ロボット群の相対位置推定手法の改良,推定結果の精度向上も進める.
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