本研究の目的は,無線ネットワークを利用した複数の小型ロボット(ローバ)による小惑星表面探査手法を確立することである.小惑星探査ローバに要求される機能は,(1)移動機能 (2)小惑星探査機能 (3)自己位置推定機能 (4)省電力設計である.我々の提案するメッシュ型無線ネットワークを構築する複数台の小型ローバ群を用いることにより,トラブルに頑健かつ,小惑星上の効率良い探査が可能となる.また各ローバ間の通信電波強度(RSSI)を利用した自己位置推定機能により,位置を特定した探査も可能となる.本研究課題では(2)~(4)の機能実現を分担し,次の目的に重点を置き研究を進めている.<目的1>省電力通信規格ZigBeeを利用した動的メッシュ型ネットワーク構築.<目的2>RSSIを利用した複数ローバ間の自己位置推定機能の実現. 当初はやぶさ2に搭載されるMINERVA-IIでの採用を目指し,MINERVA-IIコンソーシアムに参加してきた.ところがH24年6月のコンソーシアムの最終選考において,我々の提案が不採用となった.それに伴い本研究目標を次世代機はやぶさMk2等に変更することとした. 研究一~二年目は,(a)ZigBee規格の物理層とMAC層のみ定義したIEEE802.15.4によるメッシュ型無線ネットワークの実現,(b)ローバ間の相対距離とRSSIの関係を数理モデル化,遺伝的アルゴリズムによる各ローバ間の相対距離推定手法の提案,(c)距離推定アルゴリズム改良による精度向上,(d)距離推定精度向上のために複数アンテナを搭載したローバを試作,試作機の耐放射線の実施等を行った. 研究最終年度は,複数アンテナを活用した小惑星の地形も考慮した相対距離推定アルゴリズムを提案,推定精度の評価を行うとともに,3Dプリンタを用いたローバ筐体の作製,複数アンテナを具備する小型ローバ10台を試作した.
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